税務調査コラム

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№1

2020.08.25

 今回は、長年、確定申告をしていなかった方の税務調査の結果について説明します。
 この事案は、ある税理士先生からの支援要請で私が調査途中から対応したものです。

 

 これまで確定申告をしていなかった方が新型コロナウイルス感染症で
影響を受ける事業者への助成金や融資などの手続きの相談に、
当グループの税理士事務所に来られるということがかなりありました。
 そして、無申告の方がたくさんいらっしゃること、不安に思っていらっしゃること、どうすればいいかわからず困ってらっしゃること、
いざ所得金額などを計算する際に様々な苦労・難しい点があることを今更ながら再認識しました。

 

 税務調査を不安に思っている方だけでなく、
これまで税金の申告をしてこなかった方、
またアフィリエイトの報酬、FXの所得、
仮想通貨(暗号資産)やオンラインゲームの通貨(GC)などの
売買(RMT)などによる所得、
MLMによる報酬などを申告していない方なども
この記事を読んで、信頼できる税理士への相談や税金の申告の
参考にしていただければ幸いです。

 

※ 税務調査を受けた場合の追徴税額などの状況についてはこちらのコラムをご覧ください。

 

 

※2020年8月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

 

私が受任するまでの状況

納税者の方(Aさん)の状況
事業の状況: 開業は8年前 建設関連業(下請け工事主体) 個人事業者(青色申告申請なし)経常的な外注費の支払い先は数か所。

 

申告の状況: Y年分のみ自主的に税務署へ赴き所得税の申告。その他の年分は所得税・消費税及び地方税ともに無申告。
今回の税務調査が始まって取引先からの紹介でB税理士に委任。

 

帳簿等の状況: 売上(請求関係)はパソコンで管理。売上はほぼ100%が銀行への振込決済。
経費関係は、領収書が未整理状態で保管(請求書の保存は少ない。)。

 

税務調査の状況

税務署の調査の状況は、次のとおりでした。

 

1 調査担当者: 所轄税務署 個人課税部門(一般調査担当) 1名

 

2 事前通知があり、調査担当者が自宅に臨場。

 

3 調査の初日に対応したのは、Aさん一人。

 

4 調査担当者は、事業概況を聴取後、帳簿等の状況を確認。Aさんが提示した売上データと預金通帳等を調べ、経費関係については聴き取りを行った。

 

5 調査担当者は、当初、5年前までさかのぼって是正すると言っていたが、途中から是正は過去3年間とするのでなるべく早く申告を行うよう指示した(是正額は、所得税・消費税の本税だけで200万円追徴=国税・地方税等を合わせた追加納付額は数百万円となる)。

 

6 その後、Aさんは取引先の紹介でB先生へ相談・依頼。

 

B税理士から私への依頼の内容

B税理士から私への依頼された事項は次のとおりでした。

 

① Aさんは、Y年分を除いて無申告であり、帳簿・書類は完全ではなく不備が多い。

 

② 税務署は、各年分の売上を把握し、売上は増加しており、Y年分の申告売上は明らかに少ないこと、その他の年分も相当な所得税・消費税になることを指摘し、売上を基に、推計課税を行う方針であると聞いている。

 

③ このように圧倒的に納税者が不利な状況での調査対応を支援して欲しい。

 

調査の最終結果

 私が受任して、税務署との交渉は2回行い、1か月弱で終了しました。

 

 申告書の提出は、所得税と消費税の期限後申告を1年分のみ提出しました。

 

 追徴税額等は、国税・地方税・国保料等を合わせた総額で100万円未満となりました。

 

 

私の対応

 B税理士からの要請を受けた後、私が行ったことは次の4つです。

⑴ 税務署の調査内容の確認

⑵ Aさんの状況確認

⑶ ⑴、⑵を踏まえ最善と思われる対応策を検討・実施

⑷ 調査担当者と交渉

 

 以下では、税務調査への対応で私が最も重要だと考えている⑴、⑵及び⑶についてポイントを説明します。

 

⑴ 税務署の調査内容の確認
 ア この調査の税務署の意図は?

 これは、この調査は、調査担当者がたまたま選んだ事案なのか、そうではなく税務署に何らかの資料情報や方針があり、それが原因でAさんを調査しているのかを把握するということです。

 

 税務署がどのようや資料や情報を持って調査に来ているかはわかりませんし、教えてくれることはごく稀です。

 

 税務署に何らかの意図があるのであれば、その資料情報の内容を解明・確認されるまで、またはその方針に沿った形が整うまでは、調査は終わらないことになりますので、当方もそれを踏まえた対応を検討することとなります。

 

 そうではない一本釣り的な選定であれば、単に一事案の処理に向けて対応することとなります。

 

 イ 調査担当者が調査で確認した内容は?

 これは、調査担当者が、何を質問し、検査したかを詳細に確認することです。

 

 この確認により、税務署の調査の方向性を見極めるとともに、税務署と調査を受けている方、双方のストロングポイントとウィークポイントを分析・検討することができ、当方が取るべき適切な対応策を検討することが可能となります。

 

 前にも記載しましたが、調査担当者は、事業概況を聴取後、帳簿等の状況を確認して、保存のある売上データと預金通帳等を調べ、経費関係については聴き取りを行っただけでした。

 

 ウ 調査の終結に向けた意向は?

 これは、調査担当者やその上司が、この調査をどのような形で終わらせようとしているか、税務署の終結に向けた許容範囲(遡及年数、税目、加算税の種類、税額、終結期限など)を把握することです。

 

 この確認により、落としどころを含めた当方の取るべき適切な対応策を検討することが可能となります。

 

⑵ Aさんの状況確認
 ア Aさんの実情の確認

 最初に、私が調査着手後に関与することとなった場合の取組み方針について説明いたします。

 

 私が関与した際には、まず、調査を受けている方の業務の内容や状況、更に生活の状況、資産や負債、消費支出などの状況などについて、過去から現在に至るまでの状況を確認することとしています。

 

 これは何故かと申しますと、個人に対する税務調査の場合は、事業に関することだけが対象となるわけではありません。

 

 税務署は、調査を受ける方の 過去数年間の

全ての所得(事業所得以外の利子、配当、不動産、給与、退職、山林、譲渡、一時、雑という所得)と所得控除の内容、更に税額控除の内容に関する事項を調査対象とするのです。

 

 つまりその方の 

調査対象年分における

全ての経済取引 = 人、もの、金、その他の資産の流れ 

を調べると言っても過言ではありません。

 

 ですから、私が税務調査に適切に対応する方策を検討する上では、調査を受ける方の業務のことだけでなく、生活の状況も含めて全て確認することとしています。

 

 特に、税金の申告をしていなかった方、無申告の方の場合、税務調査の対応において幾つかポイントがありますので、時間をかけてでも調査を受ける方の状況をつぶさに確認する必要があります。

 

 

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今回はここまでです。

次回は、税金の申告をしていなかった方、無申告の方の税務調査対応における配慮ポイントなどについて記載します。

 

このコラムに関連するコラムはこちらです。

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№2

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№3

 

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☆ 本件のポイント(最終回の「まとめ」より)

 

 税金の申告をしていなかった方、無申告の方でも、税務調査を全面的にあきらめることはないのです。

 

 簡単ではないことですが、適切に対応すれば、その方の実態に即した調査結果、納税者が真に納得する結果にすることができるのです。

 

 「無申告だったのだから、細かいところまで見ずに、なるべく早く、適当に払って終わらせる。」という考え方もあります。

 

 そのように対応することは可能ですし、非常に簡単なことです。

 

 しかし、「適当に(いい加減な結果で)追徴を払って終わらせる」と税務署は何年かして、またやってきます。

 

 何故なら、税務署は調査の事績(数字だけでなく、調査の様子や代表者や応対した者の態度・言動まで)記録しているので、調査担当者からすると
「ここは、前回、そこそこの金額を抵抗もせず払ってくれた。」
「この税理士なら、その関与先なら、いくらか適当に払ってくれるだろう。」と考えるからです。

 

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 なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

※ 当コラムなどの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

 

◇ ほわいと税理士グループ 当事務所の取組方針

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