税務調査コラム
- 税務調査事例 売上除外は⁈ 書類の保存がない!! 今後、再調査は? 大丈夫です! №3
※2019年11月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
前回のコラムの続きです。今回は、この調査事案を通じて私が感じた今後の参考事項について説明します。
なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。
調査後の感想
今回の事案は、
1 集計表に過少に記載又は記載していないことは重加算税の対象となるか
2 請求書等がない、領収書等への受取人等の記載内容が不十分な場合、必要経費及び消費税仕入税額控除対象と認められるか
3 費用を中心に、資料の保存・内容が乏しいものが多数あり、取引の実態・事実の証明が困難なものが多いため、今回の調査終了後においても再調査の危険性が高いためそれをどう軽減するか
を主なポイントとして対応しました。
今回の調査担当者は、
当方からの質問・主張等の中身・意図、正当性を直ぐに理解し、
適正な解決策に応じたので、比較的早期に双方が納得のいく終結
となりました!
◆ 当コラムで記載することはできませんが、調査で検討事項が提示された後における対応では、事実や法令適用の主張以外にも交渉テクニックはあります。
円滑な処理に向けて、双方が納得のいく形に持っていく、そのために交渉で突く項目は、調査担当者の事情や調査事案の状況などに応じてそれぞれです。
勿論、事案等に応じた交渉方法・テクニックは当然あります。
それが必要であり、有効なのです。e.g. 弱点、バーター、信頼関係、落としどころ など
税務調査へ対応される方へ
お伝えしたいこと
実際の税務調査では、調査担当者が明確な根拠を示さずに
「○○は重加算税対象です」と指摘するケースがあると思います。
特に調査の初期段階において、そのような指摘を受けることが多いのではないでしょうか?
その場合には、法令等を十分に理解し、事実を的確に把握した上で、適切に質問・主張していただきたいと思います。
また、調査対応においては、調査担当者の指摘にだけ対応しているということも多いでしょう。
これは調査担当者の出方を見てから対応することですから、最小限の労力で防御と反撃を行うことであり、ある意味では有効な手法と考えられます。
ただ、この場合、調査担当者主導となり、対応が後手に回り、事前に最良の手を打っておけば防げたにも拘らず取り返しのつかない不利な状況・結果となる危険も内包しています。
特に調査を受けている方が十分な資料を保存していない場合や事実を正確に把握できない場合などは、事前に税理士が問題となりそうな事項を全て抽出し、検討・確認することが非常に重要です。
① 調査担当者には、五月雨式に問題点などを指摘するのではなく、問題点・検討事項については、早めにまとめて指摘するよう依頼する(=調査担当者の腹積もり、全ての手の内を早く把握する)。
② 調査担当者から問題点等の指摘を受けた場合には、それに的確に対応(説明・反論・抗弁等)を行うとともに、計上漏れとなっている保存資料の乏しい費用など納税者側が有利となる要素について追加認容を積極的に求める。
③ 調査担当者の全ての主張と当方の全ての主張を同じテーブルに乗せて、ぶつけ合い、調整しつつ決着を図る。
手間がかかって大変と思うかもしれませんが、税務調査ではこのように全方位的に対応することが、結果的に一番効果的・効率的です。
とは言っても、実際にこのような対応を行うのは、非常にハードルが高いのかもしれません。
確かに、このような対応を的確に、効率的に行うには、勿論、相当な知識とスキルが必要です。
実際に調査を受けておられる方にとっては、次々と問題点を指摘されるより、まとめて指摘を受けて対応する方が、精神的、時間的な負担を軽減できます。
税理士も、調査担当者の手の内を全て見た上で対応する方が対応しやすいものです。
また、資料などが無くても、納税者に有利な事実については、積極的に主張すべきです。
更に、全ての問題点を指摘された上で対応することで事後における再調査の危険性を大きく低減できます。
このような観点から、私は、常にこのような対応を積極的に実施しています。
まずは、少しずつでもこのような対応方法にトライしていただければ、スキルは確実に上がります!
対応策がわからない場合は、
お気軽に当事務所へご相談ください。
3回にわたって掲載しました今回の調査事例については以上で終わります。 参考になれば幸いです。
※このコラムの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。
◇ 当事務所の取組方針 一般の方だけでなく、税理士など資格のあるプロの先生方が
税務に限らず
「この場合、どう対応したらベストなの?」
「これって、本当にこの判断でいいの?」
「今更、誰にも聞けない…これってどうしたらいいの?」
などと迷う時に
① 事実・実情・証拠などを確認し、最適な助言を、早期に、
確実に行います。② ご要望に応じ、最適の対応を行うための具体的な支援
(資料作成、面接‣出張、複数関与、複数受任・共同受任・復代理など)を行います。☆ スポットで支援することが業務です。
「顧問先を奪われるのでは?」という心配は不要です!
- 税務調査事例 売上除外は⁈ 書類の保存がない!! 今後、再調査は? 大丈夫です! №2
※2019年11月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
前回のコラムの続きです。前回のコラムでは、調査の概略を説明しました。
今回は、皆さんの関心が一番高いと思われる調査の結果から説明します。
なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。
6 結果
⑴ 人事異動直後着手の特別調査事案で多額の申告漏れがありましたが、
依頼を受けて1か月半後に終結(交渉は合計6回)。
⑵ 遡及年分 当初の7年分から4年分に。
⑶ 売上 前記5の⑴のみ加算。
このうち、5年前から新たに売上の振込先とした口座への入金分は
重加算税対象、それ以外は過少申告加算税対象。⑷ 外注費 調査の土俵に乗せた上で、全て認容。
⑸ その他の費用 調査の土俵に乗せた上で、全て認容されただけで
なく、未計上分は追認。以上の結果、
追徴税額(国税・地方税の本税+附帯税)は、
当初調査担当者が示した金額の40%弱となりました。
また、私が確認したこと以外に新たな事実がないことを前提に、
費用に関する部分を含めて今後の再調査の恐れはなくなりました。では、このような結果となったのは、どのように対応したからか
について説明いたします。6 交渉状況(主要項目)
次の点について、極めて穏やかに質問、主張いたしました。
⑴ 隠蔽又は仮装の有無及び偽りその他不正の行為の有無
・ 5の⑴について、国税通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等
の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」たと判断した課税
要件事実とその証拠は何ですか。・ 本件については、重加算税に係る事務運営指針 ※ に規定する賦課基準における隠蔽
又は仮装に該当する場合のどの項目に該当するのですか。その事実・証拠は何ですか。
※「申告所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/pdf/02.pdf・ 重加算税の賦課要件を充足するには、過少申告行為とは別に隠蔽又は仮装と評価すべき
行為の存在を必要としているものであると解されています。
調査官の指摘する事実は、事務運営指針に規定されている項目にズバリ合致しているとは考えられません。
むしろ、本件は、重加算税を取消した平成27年7月1日裁決(所得税白色申告者において、収支内訳書に虚偽記載をしただけでは、隠ぺい仮装があったとは認められないと判断した事例)と非常に似通っていると考えられます。
具体的に事実をみてみますと…
☞ 前回のコラムの「3 私が把握した事実」を
下記の項目に分けて主張しました。① 売上金は・・・
② その入金のあった預金口座の通帳は・・・
③ その通帳及び売上請求書控えは・・・
④ 申告漏れ所得は・・・
⑤ 集計表に根拠のない額を記載する行為は・・・以上から、A氏の行為は・・・ 重加算税の賦課要件を充足しないと考えるべきでは
ないですか。・ 偽りその他不正の行為のない年分については遡及年分数を考慮すべきではないですか
(国税通則法第70条第4項第一号)。⑵ 費用について
当方の確認作業により、領収証などは保存していないが、A氏の具体的で詳細な供述
及び現金の流れや取引の状況からみて、支払いがあったことが合理的に推認できることを主張・立証し、これらについては追認されるべきと主張しました。勿論、現在計上しているものに関する否認防止(認容)については、様々な角度から立証・主張しました。
以上のように対応いたしました。
ただ、このような対応を行うためには、その前提として
とても重要なポイントがあります。ここが私どもの取り組みの肝の部分となります。
◆ ポイント1
私は、「全容を解明・把握することでしか、的確な主張・反論を適時に
行うことはできない」とのポリシーで業務を行っています。今回の事案についても、私自身が調査官の立場で更正処理を行うことを
前提に確認等を行う、つまり私自身が調査を行うとのスタンスで、事実の確認・聴取を徹底して行いました。これにより、税務署が把握したと思われることよりも
多くの事実を把握・確認することができ、税務署との交渉前に
的確な対応策を検討し、手を打つことができるのです!
◆ ポイント2
実は、調査担当との1回目の交渉では、前述の5の⑴だけ指摘された
だけでした。
私は、当方が的確な反論を行った場合、その対抗措置として、
税務署は指摘事項を増やす(調査を追加・拡大する)であろうことを
想定しました。
このため、1回目の交渉時において
「後々、次々と問題点を指摘されたり、反面調査をされたりすると調査が長引く。また、調査終了後、新たな情報による再調査となった場合、本件以上に納税者の心身の負担が大きくなる。このため、全体を調査し、検討事項や問題点をまとめて開示して欲しい。」 と依頼しました。
その結果、2回目の交渉時に⑵、⑶、⑷がまとめて指摘されたというのが実態です。
これにより、問題事項を全て土俵に乗せ、事案の全体像を理解した上で
対応策を検討し、双方のストロングポイント、ウィークポイントを
見極めて交渉を行うことができるのです!
更に、この対応で再調査の危惧を削減できるのです!!∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
今回はここまでです。
次回はこの事案の調査を通じて参考となったことなどについて、
記載します。※ 当コラムなどの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。
◇ 当事務所の取組方針 一般の方だけでなく、税理士など資格のあるプロの先生方が
税務に限らず
「この場合、どう対応したらベストなの?」
「これって、本当にこの判断でいいの?」
「今更、誰にも聞けない…これってどうしたらいいの?」
などと迷う時に
① 事実・実情・証拠などを確認し、最適な助言を、早期に、
確実に行います。② ご要望に応じ、最適の対応を行うための具体的な支援
(資料作成、面接‣出張、複数関与、複数受任・共同受任・復代理など)を行います。☆ スポットで支援することが業務です。
「顧問先を奪われるのでは?」という心配は不要です!