税務調査コラム

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№3
 これまで確定申告をしていなかった方が新型コロナウイルス感染症で
影響を受ける事業者への助成金や融資などの手続きの相談に、
当グループの税理士事務所に来られるということがかなりありました。

 

 無申告の方がたくさんいらっしゃること、不安に思っていらっしゃること、
どうすればいいかわからず困ってらっしゃること、
いざ所得金額などを計算する際に様々な苦労・難しい点があることを
今更ながら再認識しました。

 

 税務調査を不安に思っている方だけでなく、

これまで税金の申告をしてこなかった方、

またアフィリエイトの報酬、FXの所得、

仮想通貨(暗号資産)やオンラインゲームの通貨(GC)などの

売買(RMT)などによる所得、

MLMによる報酬などを申告していない方なども

この記事を読んで、信頼できる税理士への相談や税金の申告の

参考にしていただければ幸いです。

 

※2020年8月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

 

 前回に引き続き、長年、確定申告をしていなかった方の税務調査について説明します。

 

 この事案は、ある税理士先生からの支援要請で私が調査途中から対応したものです。

 

 今回でこの事案に関する説明は終了いたします。

 

 

 

⑶ ⑴、⑵を踏まえ最善と思われる対応策を検討

 

ア 税務署の調査の弱点を検討
  ここまで解説してきた⑴、⑵を踏まえて、私は税務署の調査の弱点は次のとおりであると分析しました。

 

〇 私が考えた本件調査の弱点

税務署は、調査額を確定しておらず、現状、直ぐに、税務署の調査額で適法に課税・追徴(更正・決定を行う)を行える状態にないこと。

税務署がその状態になるためには、

①納税者の保存する全ての書類の確認、取引先との取引状況の確認

②課税の根拠となる証拠の収集

③推計課税の比準となる同業者の抽出と証拠の保全

④資産負債面の検討

⑤審理担当部署での検討

などという作業に多大な時間・事務量を要すること。

 

イ 対応策

 

 前述した「税務署は、調査額を確定していない」という弱点は、
当方が100%有利という意味ではありません。

 

 これは、別の視点で考えると、税務署任せにしていると、調査はなかなか終わらないということ、そして調査を受けている方の精神的負担は累増するということを意味します。

 

 また、こちらから調査を受けている方の実態・実情を主張せずに、税務署の調査結果を待っているだけという対応をしていると、調査を受けている方の実態を適切に反映した税務署の調査結果(所得や税額など)とならない可能性が非常に高くなります。

 

 これは、前述したように、調査担当者が誤解に基づき判断(課税)していることをみても明らかでした。
 また一方で、税務署の「調査の終結に向けた意向」も把握し、それを踏まえて、終結に向かう方向での対応策を検討することも必要となります。

 

 そこで私は、把握・確認した状況を踏まえて、次の対応をとることとしました。

 

〇 私が考え、実行したこと

① 調査を受けている方の実態・実情を具体的に詳細に把握し、税務署に主張する。

 

 ・ 相当の時間を要してでも実態に近い所得金額や消費税額、資産・負債(貸借対照表)を調べる。

 

 具体的には、現年度の状況を正確に把握・検証し、それをベースとして、過去の年分について、各年分の取引動向や特殊性を正確に把握し、加味することで所得金額等を合理的に推認することとしました。

 

 上述したとおり、Aさんは、
過去の年分については、領収書等で保存のないものも多く、過去の年分の領収書などを短期間に完全に収集することは非常に難しいものの、現年度については、その時点では収集・整理・保管することが可能でした。

 

 そこで、私が国税当局在職時に行っていた調査における推計手法の一つである、
現年度の状況を正確に把握・検証し、それをベースとして、過去の年分については、各年の取引動向や特殊事情を正確に把握し、このベースへ適正に加味することで所得金額等を推認する方法を採用し、この方法は合理的であると主張することにしたのです。

 

 また、同時に「⑵ Aさんの状況確認」の「ア Aさんの実情の確認」に記載したとおり、生活の状況、資産や負債、消費支出などの状況などについて、過去から現在に至るまでの状況を確認することにより、各年の貸借対照表を簡易に作成しました。

 

 そして、この貸借対照表からみても前述の所得金額が妥当であることを補充的に主張することとしました。

 

 税務署の調査には、前述の「ア 税務署の調査の弱点を検討」に記載した弱点があります。

 

 税務署は、自身の調査額は確定していない中で、当方のこの主張に対抗するためには、早期に、実際の取引額を反証するか、当方の手法が不適正であることを証明した上で、税務署独自に推計課税を行い、税務署の採用する推計方法の方が合理的であることを証明しなければならないという事態に迫られるのです。

 

 なお、実際の作業としては、B税理士に現在の年分の取引状況を非常に短期間のうちに集約していただき、私がその集約データを検証・分析し、不備な点などについてはAさんに状況を確認し、現在の年分の収支状況を確定しました。

 

 そして、上記⑵でAさんから聴き取り、取引状況も確認した各年分の特殊事情などを加味して過去の年分の所得金額や課税標準等を合理的に推認しました。

 

 なお、現年度の状況を正確に把握するために行ったことは、主に次の2点です。

 

(ア)現在未整理状態で保管されている書類については整理・入力・集約・検証を行うとともに、収集・保存漏れ等を把握し、収集・保存漏れとなっている取引を把握するとともに、同様の事態が起きないよう手当する、

 

(イ)私が関与した日以降については、全ての書類を収集・保存する(※書類を保存することができなかった場合は支出・取引の記録をメモとして残す)。

 

※ 以上の2点は、私が国税当局で調査を担当しているときに、調査の相手方に調査の初期段階でお願いし、調査期間中も調査で臨場した都度、その実施状況を確認し、問題があれば改善を指導していた事項です。

 

② 税務署の調査担当者が税務署部内の上司等への説明や起案・決裁を受けやすいような資料を作る。

 

  本件については、税務署の調査には、前述の「ア 税務署の調査の弱点を検討」に記載した弱点があります。

 

 一方で税務署は、断片的で規則性がない資料や根拠の乏しい手法に基づく課税は不適切・不適法と考えますが、調査対象者の実態を反映していると考えられるようなある程度の期間の正確な資料・データに基づく課税標準の推計や過去の裁決事例や判決において合理性があると認められた手法(※その手法を使用した事案と基礎となる状況の類似性は必要)に基づく課税は適切・適法と考えます。

 

 そこで、この弱点を埋めつつ、適切な・適法な課税となるように、当方が資料を収集・算定作業を行い、税務署へ提出する資料を作成することとしたのです。

 

 私の行った推計方法のポイントは、現年度の状況を正確に把握・検証し、それをベースとして、過去の年分については、各年の取引動向や特殊事情を正確に把握し、このベースへ適正に加味することですので、それを説明・証明する資料を作成したのです。

 

 また、現年度の状況を正確に把握・検証し、それをベースとして、過去の年分については、各年の取引動向や特殊事情を正確に把握し、このベースへ加味することで所得金額等を推認することは合理的であるということは、国税不服審判所や裁判所で多くの事案について認められていますので、これに関する資料を作成しました。

 

 なお、「税務署部内の説明や起案・決裁がとおりやすい資料を作る」ことについては、私が税務署や国税局で多くの複雑・困難な調査に担当者・指導者・管理者・審理担当者として携わった経験をフルに応用しています。

 

③ 税務署の調査担当者が税務署の上司等へ説明し、了承が得られやすいように説明する。

 

 ①、②の2つの対応策で作成した資料を調査担当者に手交し、調査担当者が上司や審理担当者に説明(国税部内では『復命』といいます)する際に、チェックされ、質問されそうなポイントについては、上司等に説明しやすいように細かく説明しました。

 

 調査担当者は、私が提出した資料を持って上司(統括官)へ説明に行き、上司からの質問を携えて私のところへ戻り、その都度私からは、上司の質問に対する回答と次に上司が発するであろう質問とそれに対する回答を説明しました。

 

 調査担当者は、私と上司の間で、そのようなやり取りを何度か繰り返しましたが、最終的には、私の作成した資料通りで調査は終了することになりました。

 

 

 以上の対応により、私が受任して、税務署との交渉は2回行い、1か月弱で終了しました。

 追徴税額等は、国税・地方税・国保料等を合わせた総額で、当初の税務署提示額の半分以下(数分の一)となりました。

 

 調査を受けている方の実情を適切に把握し、その実情を示す根拠と合理性のある具体的な数字を算出し、税務署の調査担当者やその上司などが納得のいく説明を行い、様々な方向から交渉し、税務署の調査担当者、調査を受けている方の双方が納得する調査結果で早期に調査を終結することができたのです。

 

※ 税務調査を受けた場合の追徴税額などの状況についてはこちらのコラムをご覧ください。

 

 

まとめ

 このように、税金の申告をしていなかった方、無申告の方でも、税務調査を全面的にあきらめることはないのです。

 

 簡単ではないことですが、適切に対応すれば、その方の実態に即した調査結果、納税者が真に納得する結果にすることができるのです。

 

 「無申告だったのだから、細かいところまで見ずに、なるべく早く、適当に払って終わらせる。」という考え方もあります。

 

 そのように対応することは可能ですし、非常に簡単なことです。

 

 しかし、「適当に(いい加減な結果で)追徴を払って終わらせる」と税務署は何年かして、またやってきます。

 

 何故なら、税務署は調査の事績(数字だけでなく、調査の様子や代表者や応対した者の態度・言動まで)記録しているので、調査担当者からすると
「ここは、前回、そこそこの金額を抵抗もせず払ってくれた。」
「この税理士なら、その関与先なら、いくらか適当に払ってくれるだろう。」と考えるからです。

 

 

 現在発展している企業は、税金対策や税務調査を契機として、内部統制やコンプライアンスの確立や財務・会計の適正化を図ったことが適正な発展に大きく影響しているといっても過言ではないと私は考えます。

 

 苦難にあった時に曖昧な処理をするのではなく、
現実を正しく受け止めて、事後の改善・発展に生かすこと、
それでこそ、その苦難を、単なる苦難、負の出来事として終わらせるのではなく、
正しく乗り越えたことになると私は考えます。

 

 起きてしまったことをいい加減に処理したり、マイナスの影響だけで終わらせるのではなく、何らかの改善、プラスの効果につなげることで、ヒト・モノ・金・情報・経験などを無駄にしない、真に活かすということが大切だと思います。

 

 税金の申告をしていなかった方、無申告の方を含めて、記帳や記録の保存が完全ではなく実際の金額を算定することはできない場合に、実態に近い所得金額や消費税額、資産・負債(貸借対照表)を調べるためには、確かに、専門家のテクニックと時間を要します。

 

 それでも、
ご本人の経理の状況、申告すべき正確な所得金額や各種控除、納税額などを認識・理解していただき、
その上で、税務調査に対応していただいたり、適法な節税策や業務の改善などを検討していただいたりすることで、
事業の内容を正しく見直し認識する機会となり、その結果を企業の改善や発展につなげられれば、
時間やお金、労力や精神的負担といったコストも一番効率的となり、結果としてご本人が真に納得するものと私は考えております。

 

 

★あとがき★

 当コラムで記載することはできませんが、調査対応において、事実や法令適用の主張以外にも交渉テクニックはあります。

 

 円滑な処理に向けて、双方が納得のいく形に持っていく、そのために交渉で突くポイントは、調査担当者の事情や調査事案の状況などに応じてそれぞれです。

 

 勿論、事案等に応じた交渉方法・テクニックは当然あります。それは必要であり、有効なのです。
 e.g. 弱点、バーター、信頼関係、落としどころ など

 

 このような対応を的確に、効率的に行うには、勿論、相当な知識とスキルが必要です。
 対応策がわからない場合は、お気軽に当事務所へご相談ください

 

 

 3回にわたって掲載した今回の調査事例については以上で終わります。

参考になれば幸いです。

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

このコラムに関連するコラムはこちらです。

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№1

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№2

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№3

 

なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

※ このコラムの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

◇ ほわいと税理士グループ 当事務所の取組方針

 

一般の方だけでなく、税理士など資格のあるプロの先生方が

税務に限らず

「この場合、どう対応したらベストなの?」

「これって、本当にこの判断でいいの?」

「今更、誰にも聞けない…これってどうしたらいいの?」

などと迷う時に

① 事実・実情・証拠などを確認し、最適な助言を、早期に、確実に行います。

② ご要望に応じ、最適の対応を行うための具体的な支援

(資料作成、面接‣出張、複数関与、複数受任・共同受任・復代理など)を行います。

☆ スポットで支援することが業務です。

「顧問先を奪われるのでは?」という心配は不要です!

2020/08/27
税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№2
 前回に続き、長年、確定申告をしていなかった方の税務調査の結果について説明します。

 

 この事案は、ある税理士先生からの支援要請で私が調査途中から対応したものです。

 

 これまで確定申告をしていなかった方が新型コロナウイルス感染症で
影響を受ける事業者への助成金や融資などの手続きの相談に、
当グループの税理士事務所に来られるということがかなりありました。

 

 無申告の方がたくさんいらっしゃること、不安に思っていらっしゃること、
どうすればいいかわからず困ってらっしゃること、
いざ所得金額などを計算する際に様々な苦労・難しい点があることを
今更ながら再認識しました。

 

 税務調査を不安に思っている方だけでなく、

これまで税金の申告をしてこなかった方、

またアフィリエイトの報酬、FXの所得、

仮想通貨(暗号資産)やオンラインゲームの通貨(GC)などの

売買(RMT)などによる所得、

MLMによる報酬などを申告していない方なども

この記事を読んで、信頼できる税理士への相談や税金の申告の

参考にしていただければ幸いです。

 

※ 税務調査を受けた場合の追徴税額などの状況についてはこちらのコラムをご覧ください。

 

 

※2020年8月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

 

⑵ Aさんの状況確認(つづき)

 

◇ 税務調査対応における 税金の申告をしていなかった方、無申告の方の配慮ポイント ◇
1 正確な所得金額や消費税額を認識していない、理解していないという点
 税金の申告をしていなかった方、無申告の方の場合、税務調査の中で一番大きな問題となるのは、調査を受けている方が、自身の正確な所得金額や消費税額を認識していない、理解していないという点です。

 

 どういうことかと申しますと、税金の申告をしていない方は、ほとんどの場合、

 

① 取引に関する帳簿をつけていない、データを残していない

 

② 取引の証拠資料(納品書・請求書・領収書など)を完全に保管することはできていない

 

③ 過去数年間の所得金額や消費税の金額が正確に幾らになるのか計算したことがない

 

という状態なのです。

 

※ 無申告の方の中にも、全ての資料を残し、ご自身で所得金額や消費税額を正しく計算し、認識している方はいらっしゃいますが、そういうケースは極まれですね(ご自身で所得金額や消費税額を正しく計算し、認識している方が税金の申告をしていないということは・・・、余程の事情があったということでしょう)。

 

 そうすると、税務署が調査した所得金額や税額などが調査を受けている方の実態に合っているのか、妥当な金額なのか、当の本人はわからないということになります。

 

 これは同時に、税理士が関与した場合も、調査担当者に税理士が主張・反論する内容は適正なのか、また税理士が調査を受けている方に「この辺りが適正な調査の妥結額ですよ。」と助言しても、それが妥当なのかご本人は判断できないのです。

 

➢ ポイント

 調査を受けている方が自身の正確な所得金額や税額を認識・理解している場合ですと、その金額と調査額とを比較考量して、調査結果に応じるか否かを容易に判断できるのですが、そうでない場合、調査額を理解・納得することは困難であり、調査の終了や納税等の資金調達が困難になるのです。

 

 少し考えていただきたいのは、税務署が調査した所得金額や税額などが、本来、正確に記帳され、記録が残っていた場合の正しい金額を下回る額になるということは通常考えられないということです。

 

 それはそうですよね。
 税務署に調査してもらった方が実際よりも税金が安くなるというのであれば、誰もまともに申告しなくなりますからね。

 

 無申告の方も含めて正確な記帳や記録の保存がない場合、税務調査は推計で所得金額や税額を算出することとなりますが、如何に合理的な方法で推計されたとしても、本来の所得金額や税額と同じ額になるということはほぼあり得ないことです。

 

 むしろ、調査を受ける側からすると「帳簿や書類がなくて、税務署が推計した場合の調査額は、本来の金額よりも高い可能性がある。」と覚悟して、対応した方が良いのです。

 

 

2 調査を受ける方に調査の結果や影響に相場観・現実感がないこと

 

 税金の申告をしていなかった方、無申告の方が税務調査で困る点がもう一つあります。

 

 それは、調査を受ける方に調査の結果、つまり追徴額や処分の重さ・影響に相場観・現実感がないということです。

 

 どういうことかと申しますと、
 税の申告を行っている方は、自身の所得金額が幾らで、どのような計算をして、何%の税率で納税すべき税金が算定されているかについて、大体のことをご存知です。

 

 また、「重加算税をかけられると大変なことになる」、「青色を取り消されると大変だ」、「役員賞与に認定されたら大損だ」などということも大体知っています。

 

 ですから、申告に誤りや漏れがあり、修正しないといけないとなった場合も、修正する金額が幾らなら追徴がどれくらいになるか、国税以外にどれだけ影響するかなどということを理解することが容易なのです。

 

 例えば、

100万円の所得金額が申告漏れとなっていた場合、

物販業による事業所得の方で 自身の所得税の税率が10%の方だと、

 

所得税10万円と延滞金と場合によっては加算税を追加で納付すること、

また住民税については税率10%で住民税10万円が追加となり、

更に事業税が課税される場合は事業税の税率5%で5万円が追加になる

ことなど、100万円の所得が申告漏れであった場合、

所得税・住民税・事業税だけで25%強、3割くらいの追加納付が必要となる

ということを容易に理解できるのです。

 

 

 ですから、税務署に指摘された金額が幾らなら、どれくらいの追徴になるかというおおよその相場がわかっているので、
指摘された内容さえ正しければ納得して終了しやすいわけです。

 

 これが税金の申告をしていなかった方の場合、そうはいきません。

 

 そもそも申告をしていないので、自身が適用される税率は「ない」からわかりませんよね。

 

 申告はしていないけど、自身の正確な所得金額や所得控除や税金を計算したことがあるなんてことがない限り、本来適用される税率もわかりませんので、税務調査により指摘された所得金額などで幾ら税金が追徴されるか全くわからないのです。

 

 ですから、税金の申告をしていなかった方、無申告の方の場合、

 

・ 「税金は開業して3年、5年はかからないので申告しなくていい。」、「税務署に申告したら半分税金で持っていかれる。」などという根拠のない情報を信じる方

 

・ 「『そんな金額払えない』とゴネれば何とかなるだろう。」という「ごね得」を信じる方

 

・ 「税務署が来たらしょうがない。指摘された金額を払うしかない。」とあきらめる方

が多いのです。

 

 一方、無申告の方の中には、税務署の調査額に対し、「そんなにある筈ない」と強く主張する方も多いです。

 

しかし、調査担当者から

「そうは言っても、記帳も記録もないんでしょ?!」、

「そう言うのなら正確な取引金額や決算書を証拠を添えて出してください。」、

「そもそも申告していませんよね!」

と言われると、

上述したとおり ご自身の記帳・記録の保存が不十分なため、

「書類が残っていないから仕方ないか」、

「幾らが正しいのかよくわからないけど税務署が言うのなら仕方ないか」

とあきらめて、

実態に即した所得金額や税額を追究することなく(=心から納得することのないまま)、最終的には税務署の調査額で終了することも非常に多い 

というのが、税金の申告をしていなかった方、無申告の方のもう一つの配慮すべきポイントなのです。

 

 

 これは、自身の正確な所得金額や所得控除や税金を計算したことがないからある意味仕方ないのかもしれませんが、実際に税務調査を受けて、何の対応を取らなかった場合、大変な目に遭うわけです。

 

 

3 以上を踏まえた対応

 

 以上のポイントに配慮した私の対応方針は以下のとおりです。

 

 まず、私の調査対応は、どのような事案であっても調査を受けている方が自身の所得や税額を正しく理解・認識していただいた上で納得して調査を終了することと、調査を契機として事後において、適法・適正な計算と申告ができるようになっていただくことを目的とした対応をします。

 

 このために、税金の申告をしていなかった方、無申告の方を含めて、

記帳や記録の保存が完全ではなく実際の金額を算定することができない場合であっても、

調査を受けている方の業務の内容や状況、

更に生活の状況、資産や負債、消費支出などの状況などについて、

過去から現在に至るまでの状況を確認するとともに、

現在進行中の年分については正しい記帳方法や記録の保存方法を

習慣づけていただくなどして、

極力多くの資料(証拠)を集めて、

実態に近い所得金額や税額を算出することとしています。

 

 そして、それをご本人に認識・理解していただき、その上で税務署の調査額を検討することにより、ご本人が真に納得する調査結果に導くことができるものと考えております。

 

◆ Aさんのケース

 

 Aさんの場合、どうであったかというと、上述した確認により次のことがわかりました。

 

・ 開業以来、売上はかなり増えているが受注単価は、それほど上がっていない

→ 外注費など費用の増加割合の方が高い → 所得や資産は増えていない

 

・ 受注拡大のための接待交際費が増えている

→ 所得や資産は増えていない

 

・ 過去の年分については、費用に関する領収書で保存がないものが多数ある

→ 現在残っている領収書だけで計算すると、所得金額は実際よりも過大となる

 

・ 生活の状況は開業以来大きく変わっておらず慎ましいものである

→ 資産・消費支出は増えていない、負債は減少していない

 

・ 過去の年分においてはそれぞれ様々な特殊事情があったこと

→ 税務署が行う一般的な推計課税(各年の売上金額を基礎とした同業者比準方式)を適用されるとAさんの特殊事情が反映されず、所得金額は実際よりも過大となる可能性が高い

 

 

 イ Aさんの調査対応の状況

 

 これは、調査を受けている方が税務調査の場でどのような言動を行ったかを具体的に確認することです。

 

 税務署の調査というものは、緊張するものです。
 税務署の調査に「慣れている」、「緊張することはない」、「どんな質問・検査に対しても適切かつ的確に回答・対応できる」という方は少ないのではないでしょうか。

 

 税務署の調査担当者から発せられる様々な質問、専門用語交えた確認などへ対応する際に、適切・的確な回答が行えなかった、曖昧な回答をしてしまった、間違ったことを答えてしまった、どんなことを答えたかすら覚えていない、或いは調査官に間違った認識を与えてしまったことに気づいていないなどということが起きるのは当然です。

 

 このような場合、その状態を放置していると税務署の調査担当者に誤った認識を植え付けてしまい、誤った認識に基づいて課税や処分が行われてしまいます。

 

 ですから、上述した「⑴ 税務署の調査内容の確認」を行うのと同様、調査を受けている方が税務調査の場でどのような言動を行ったかを具体的に確認することが必要となるのです。

 

◆ Aさんのケース

 

Aさんの場合はどうだったかと申しますと、
税務署の調査担当者は、Aさんから提示された売上のデータや預金通帳をみて、「開業以来、売上はかなり増えているので利益もかなり増えたのではないですか。月にどれくらい残りますか。」と質問していました。

 

この質問に対し、Aさんは
「そうですね。20万か30万かなぁ。帳面がないのでわかりませんが…」と答えていました。

 

 そこで税務署の調査担当者は、

「Aさんは、毎月の手元に残るお金(=最終の儲け)が少なくとも20~30万円以上あることを認めた」と解釈し、調査で確認した売上データとこの応答に基づいて、見込みの調査額(追徴額)を算定し、Aさんに伝えたのです。

 

 

 皆さんは、Aさんのこの応答や対応をどう感じましたか。

 

 

 皆さんは、調査担当者の「月にどれくらい残りますか。」という質問の意図を理解できますか。

 

 

 

 私は、B税理士からこの状況をお聞きした時に、

調査担当者の質問の意図は、

「何もかも使って手元に残るお金はどれくらいですか?=月の所得金額」を尋ねたつもりなのだろうが、

日々の記帳や記録の保存ができていない人に、調査の初期段階で、それも、現場ごとの利潤のことか、

月の所得金額のことか、資産の増加のことかわからないような曖昧な質問をするなんて…

この担当者はあまり調査に精通していないんじゃない  と思いました。

 

 私がAさんに、この質問をどう理解して答えたのか尋ねたところ

「外注費や現場での消耗品などを支払った後はどれくらい残るか」と尋ねられたのだと思って答えた

ということでした。つまり、現場ごとの粗利益を答えたのですね。

 

 しかし、調査担当者は毎月の儲けと誤解したのです。

 

 Aさんは、調査担当者から追徴税額の概算を聞いた時に、

 

・ 自分は帳面をつけていないので年間の所得や消費税の金額は全くわからない。

→ どれだけあるかわからない → そんなにあるかどうかもわからない

 

・ 税務署の調査官がそう言うのなら、それだけ払わないといけないのだろう。

→ 仕方ないのかな → どうすればいいかもわからないなぁ

 

・ お金はないがどうやって支払えばいいのだろう。

と考え、いわゆる、あきらめの心境と漠然とした不安しかなかったと

仰っていました。

 

 これこそ、上述した
「税金の申告をしていなかった方、無申告の方の場合、税務調査の中で一番大きな問題となること、それは、調査を受けている方が、自身の正確な所得金額や消費税額を認識していない、理解していないということ」の問題点が現れていたのです

 

 もしAさんが、最後までAさん一人で税務調査に対応していた場合、恐らく、調査担当者の出した調査額(追徴総額 数百万円)で調査は終っていたことでしょう。それは、Aさんも認めておられました。

 

 税務調査では、こういうことがよく起きます。

 

 調査担当者の質問とそれに対する納税者の回答の意図が異なっていて、後で色々と面倒なことになるのです。

 

 一番大変なのは、調査を受けている方が、ご自身の実情や実態、取引の事実などを税務署の調査担当者にうまく説明できない、理解してもらえない=主張や証明することができない という場合です。

 

 このような場合は、税務署の調査が大詰めを迎え、大体の所得金額、追徴税額や処分の内容を聞いたときに、ご本人の全く思わぬ調査結果(予期せぬ多額の追徴税額や不利益な処分)となっていることに驚くということになります。

 

 こういったことを防ぐ意味でも、税務調査の対応は、専門家に、相談し、全てを打ち明けて資料を提供し、後は任せた方が、結果として、お金、時間、労力、精神的な負担など様々な点で良い結果となるのです。

 

 私は、調査を受ける方にあらゆることをお聞かせいただくことで、

➢ 仮に調査を受けている方が税務署の調査担当者へ誤った回答・対応を行っていた場合であっ ても、調査担当者の誤解などを私の方で訂正すること

➢ 調査を受けている方の実情や実態、取引の事実などを税務署の調査担当者にうまく説明できなかった場合も、私の方で事実・実情に即した課税となるよう主張や証明すること

ができるわけです。

 

 

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 今回はここまでです。 調査の対応策などについては、次回記載します。

 

このコラムに関連するコラムはこちらです。

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№1

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№2

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№3

 

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☆ 本件のポイント(最終回の「まとめ」より)

 

 

 税金の申告をしていなかった方、無申告の方でも、税務調査を全面的にあきらめることはないのです。

 

 簡単ではないことですが、適切に対応すれば、その方の実態に即した調査結果、納税者が真に納得する結果にすることができるのです。

 

 「無申告だったのだから、細かいところまで見ずに、なるべく早く、適当に払って終わらせる。」という考え方もあります。

 

 そのように対応することは可能ですし、非常に簡単なことです。

 

 しかし、「適当に(いい加減な結果で)追徴を払って終わらせる」と税務署は何年かして、またやってきます。

 

 何故なら、税務署は調査の事績(数字だけでなく、調査の様子や代表者や応対した者の態度・言動まで)記録しているので、調査担当者からすると
「ここは、前回、そこそこの金額を抵抗もせず払ってくれた。」
「この税理士なら、その関与先なら、いくらか適当に払ってくれるだろう。」と考えるからです。

 

 

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 なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

※ 当コラムなどの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

 

◇ ほわいと税理士グループ 当事務所の取組方針

一般の方だけでなく、税理士など資格のあるプロの先生方が

税務に限らず

「この場合、どう対応したらベストなの?」

「これって、本当にこの判断でいいの?」

「今更、誰にも聞けない…これってどうしたらいいの?」

などと迷う時に

① 事実・実情・証拠などを確認し、最適な助言を、早期に、確実に行います。

② ご要望に応じ、最適の対応を行うための具体的な支援

(資料作成、面接‣出張、複数関与、複数受任・共同受任・復代理など)を行います。

☆ スポットで支援することが業務です。

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2020/08/26
税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№1
 今回は、長年、確定申告をしていなかった方の税務調査の結果について説明します。
 この事案は、ある税理士先生からの支援要請で私が調査途中から対応したものです。

 

 これまで確定申告をしていなかった方が新型コロナウイルス感染症で
影響を受ける事業者への助成金や融資などの手続きの相談に、
当グループの税理士事務所に来られるということがかなりありました。
 そして、無申告の方がたくさんいらっしゃること、不安に思っていらっしゃること、どうすればいいかわからず困ってらっしゃること、
いざ所得金額などを計算する際に様々な苦労・難しい点があることを今更ながら再認識しました。

 

 税務調査を不安に思っている方だけでなく、
これまで税金の申告をしてこなかった方、
またアフィリエイトの報酬、FXの所得、
仮想通貨(暗号資産)やオンラインゲームの通貨(GC)などの
売買(RMT)などによる所得、
MLMによる報酬などを申告していない方なども
この記事を読んで、信頼できる税理士への相談や税金の申告の
参考にしていただければ幸いです。

 

※ 税務調査を受けた場合の追徴税額などの状況についてはこちらのコラムをご覧ください。

 

 

※2020年8月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

 

私が受任するまでの状況

納税者の方(Aさん)の状況
事業の状況: 開業は8年前 建設関連業(下請け工事主体) 個人事業者(青色申告申請なし)経常的な外注費の支払い先は数か所。

 

申告の状況: Y年分のみ自主的に税務署へ赴き所得税の申告。その他の年分は所得税・消費税及び地方税ともに無申告。
今回の税務調査が始まって取引先からの紹介でB税理士に委任。

 

帳簿等の状況: 売上(請求関係)はパソコンで管理。売上はほぼ100%が銀行への振込決済。
経費関係は、領収書が未整理状態で保管(請求書の保存は少ない。)。

 

税務調査の状況

税務署の調査の状況は、次のとおりでした。

 

1 調査担当者: 所轄税務署 個人課税部門(一般調査担当) 1名

 

2 事前通知があり、調査担当者が自宅に臨場。

 

3 調査の初日に対応したのは、Aさん一人。

 

4 調査担当者は、事業概況を聴取後、帳簿等の状況を確認。Aさんが提示した売上データと預金通帳等を調べ、経費関係については聴き取りを行った。

 

5 調査担当者は、当初、5年前までさかのぼって是正すると言っていたが、途中から是正は過去3年間とするのでなるべく早く申告を行うよう指示した(是正額は、所得税・消費税の本税だけで200万円追徴=国税・地方税等を合わせた追加納付額は数百万円となる)。

 

6 その後、Aさんは取引先の紹介でB先生へ相談・依頼。

 

B税理士から私への依頼の内容

B税理士から私への依頼された事項は次のとおりでした。

 

① Aさんは、Y年分を除いて無申告であり、帳簿・書類は完全ではなく不備が多い。

 

② 税務署は、各年分の売上を把握し、売上は増加しており、Y年分の申告売上は明らかに少ないこと、その他の年分も相当な所得税・消費税になることを指摘し、売上を基に、推計課税を行う方針であると聞いている。

 

③ このように圧倒的に納税者が不利な状況での調査対応を支援して欲しい。

 

調査の最終結果

 私が受任して、税務署との交渉は2回行い、1か月弱で終了しました。

 

 申告書の提出は、所得税と消費税の期限後申告を1年分のみ提出しました。

 

 追徴税額等は、国税・地方税・国保料等を合わせた総額で100万円未満となりました。

 

 

私の対応

 B税理士からの要請を受けた後、私が行ったことは次の4つです。

⑴ 税務署の調査内容の確認

⑵ Aさんの状況確認

⑶ ⑴、⑵を踏まえ最善と思われる対応策を検討・実施

⑷ 調査担当者と交渉

 

 以下では、税務調査への対応で私が最も重要だと考えている⑴、⑵及び⑶についてポイントを説明します。

 

⑴ 税務署の調査内容の確認
 ア この調査の税務署の意図は?

 これは、この調査は、調査担当者がたまたま選んだ事案なのか、そうではなく税務署に何らかの資料情報や方針があり、それが原因でAさんを調査しているのかを把握するということです。

 

 税務署がどのようや資料や情報を持って調査に来ているかはわかりませんし、教えてくれることはごく稀です。

 

 税務署に何らかの意図があるのであれば、その資料情報の内容を解明・確認されるまで、またはその方針に沿った形が整うまでは、調査は終わらないことになりますので、当方もそれを踏まえた対応を検討することとなります。

 

 そうではない一本釣り的な選定であれば、単に一事案の処理に向けて対応することとなります。

 

 イ 調査担当者が調査で確認した内容は?

 これは、調査担当者が、何を質問し、検査したかを詳細に確認することです。

 

 この確認により、税務署の調査の方向性を見極めるとともに、税務署と調査を受けている方、双方のストロングポイントとウィークポイントを分析・検討することができ、当方が取るべき適切な対応策を検討することが可能となります。

 

 前にも記載しましたが、調査担当者は、事業概況を聴取後、帳簿等の状況を確認して、保存のある売上データと預金通帳等を調べ、経費関係については聴き取りを行っただけでした。

 

 ウ 調査の終結に向けた意向は?

 これは、調査担当者やその上司が、この調査をどのような形で終わらせようとしているか、税務署の終結に向けた許容範囲(遡及年数、税目、加算税の種類、税額、終結期限など)を把握することです。

 

 この確認により、落としどころを含めた当方の取るべき適切な対応策を検討することが可能となります。

 

⑵ Aさんの状況確認
 ア Aさんの実情の確認

 最初に、私が調査着手後に関与することとなった場合の取組み方針について説明いたします。

 

 私が関与した際には、まず、調査を受けている方の業務の内容や状況、更に生活の状況、資産や負債、消費支出などの状況などについて、過去から現在に至るまでの状況を確認することとしています。

 

 これは何故かと申しますと、個人に対する税務調査の場合は、事業に関することだけが対象となるわけではありません。

 

 税務署は、調査を受ける方の 過去数年間の

全ての所得(事業所得以外の利子、配当、不動産、給与、退職、山林、譲渡、一時、雑という所得)と所得控除の内容、更に税額控除の内容に関する事項を調査対象とするのです。

 

 つまりその方の 

調査対象年分における

全ての経済取引 = 人、もの、金、その他の資産の流れ 

を調べると言っても過言ではありません。

 

 ですから、私が税務調査に適切に対応する方策を検討する上では、調査を受ける方の業務のことだけでなく、生活の状況も含めて全て確認することとしています。

 

 特に、税金の申告をしていなかった方、無申告の方の場合、税務調査の対応において幾つかポイントがありますので、時間をかけてでも調査を受ける方の状況をつぶさに確認する必要があります。

 

 

************************

 

今回はここまでです。

次回は、税金の申告をしていなかった方、無申告の方の税務調査対応における配慮ポイントなどについて記載します。

 

このコラムに関連するコラムはこちらです。

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№2

税金の申告をしていない方、いわゆる無申告で不安な方 大丈夫です。№3

 

———————————————————————–

 

☆ 本件のポイント(最終回の「まとめ」より)

 

 税金の申告をしていなかった方、無申告の方でも、税務調査を全面的にあきらめることはないのです。

 

 簡単ではないことですが、適切に対応すれば、その方の実態に即した調査結果、納税者が真に納得する結果にすることができるのです。

 

 「無申告だったのだから、細かいところまで見ずに、なるべく早く、適当に払って終わらせる。」という考え方もあります。

 

 そのように対応することは可能ですし、非常に簡単なことです。

 

 しかし、「適当に(いい加減な結果で)追徴を払って終わらせる」と税務署は何年かして、またやってきます。

 

 何故なら、税務署は調査の事績(数字だけでなく、調査の様子や代表者や応対した者の態度・言動まで)記録しているので、調査担当者からすると
「ここは、前回、そこそこの金額を抵抗もせず払ってくれた。」
「この税理士なら、その関与先なら、いくらか適当に払ってくれるだろう。」と考えるからです。

 

———————————————————————–

 

 なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

※ 当コラムなどの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

 

◇ ほわいと税理士グループ 当事務所の取組方針

一般の方だけでなく、税理士など資格のあるプロの先生方が

税務に限らず

「この場合、どう対応したらベストなの?」

「これって、本当にこの判断でいいの?」

「今更、誰にも聞けない…これってどうしたらいいの?」

などと迷う時に

① 事実・実情・証拠などを確認し、最適な助言を、早期に、確実に行います。

② ご要望に応じ、最適の対応を行うための具体的な支援

(資料作成、面接‣出張、複数関与、複数受任・共同受任・復代理など)を行います。

☆ スポットで支援することが業務です。

「顧問先を奪われるのでは?」という心配は不要です!

 

2020/08/25
税務調査 いくら追徴されるの? 法人、会社の方

 2020年8月現在、税務署の調査は、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、調査を受ける納税者の実情に十分配慮することとなっており、無理な調査は行わないこととなっているようです。

 ただ、国税局の調査をはじめ、不正・多額の申告漏れが見込まれる事案の調査は、本格的に行われつつあるようです。
 皆さん、ご注意ください。

 

 ここでは、国税庁が2019年11月に発表した平成30事務年度の法人の調査事績を分析し、解説いたします。

 → 個人の調査事績についてもこのコラムに掲載していますのでご覧ください。税務調査 いくら追徴されるの? 個人の方の場合

 

※2020年8月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

【参考】国税庁が発表した調査事績の詳細はこちらをご覧ください。

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/hojin_chosa/index.htm

 

※ 国税当局の発表する「事務年度」とは、その年の7月1日から翌年6月30日までの期間を示します。

※ 法人の調査実績については、その年の2月1日から翌年1月31日までの間に事業年度が終了した法人を対象とした調査に係るものを集計しています。

 

【参考】 国税の調査とは
 国税の調査は、国税通則法(第74条の2から法第74条の6まで税目ごとに規定)に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で国税職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)です。
 「実地の調査」とは、この国税の調査のうち、当該職員が納税義務者の自宅や事業所等に実地に臨場して、質問検査等を行うものです。

 

 

法人全体の調査状況

法人税
 国税庁は、「資料情報等の分析・検討を行った結果、大口・悪質な不正計算が想定される法人など調査必要度が高い法人9万9千件について実地調査を実施しました。」と発表しています。

 

① 調査件数は、9万9千件で、そのうち
何らかの誤りがあったのは7万4千件で率にして75%です。

 

② 調査を受けた法人のうち、
不正計算があったもの(隠ぺい又は仮装があったものは重加算税対象)は
2万1千件で、率にして約21%です。

 

※ 廣田の目👀
 インターネット上では、
「法人の調査で重加算税を賦課されるのは約21%。5件に1件は重加算税。」
という趣旨の税務調査に関する記事をよく見るのですが、それはこの部分です。

 

 この点について、私の見解は異なります。
 ①に記載したとおり、調査を受けた法人のうち25%は誤りがなかったのですから、
重加算税の賦課割合を分析するのであれば、何らかの誤りがあった法人をベースと
すべきだと思います。
 適法で間違いのない決算・申告を行っている法人からすれば、重加算税を賦課される可能性は0(ゼロ)ですからね。

 

 何らかの誤りを指摘された74千件をベースにすると、不正計算のあった率は、約28%となります。
 つまり、何らかの誤りを指摘された法人のうち約28%、
4件に1件以上の割合で不正(重加算税対象)があった
ということです。

 

 

③ 申告漏れ所得は、調査を受けた1件当たりでみると、
調査された全年分の合計で1,396万円を指摘されています。

 

④ 追徴税額は、調査を受けた1件当たりでみると、
調査された全年分の合計で196万円でした。

 

☞ これを単純に申告漏れ所得に対する比率で換算すると約14%です。

 

※ 廣田の目👀
 国税庁が発表した②と③は、調査を受けた1件当たりの金額ですが、
誤りのあった1件当たりに計算し直すと、
申告漏れ所得は約1,866万円、追徴税額の合計は262万円となります。

 

 ②と同様、適法で間違いのない決算・申告を行っている納税者からすれば、
追徴される可能性は0(ゼロ)ですから、納税者側に立って国税の
調査事績を分析する場合は、誤りがあった件数をベースに分析すべきと
私は考えます。

 

 なお、国税当局が調査1件当たりの係数を発表しているのは、コスト分析・調査1件当たりのパフォーマンスの分析のためだと考えています。

 

 

消費税

① 消費税の調査件数は、9万5千件で、そのうち何らかの誤りがあったのは、
5万6千件、率にして59%でした。

 

② 調査を受けた法人のうち、
不正計算があったもの(隠ぺい又は仮装があったものは重加算税対象)は
1万6千件で、率にして約16%です。

 

※ 廣田の目👀
何らかの誤りがあった56千件をベースにすると、不正計算のあった率は約28%となります。
法人税とほぼ同じ水準です。

 

③ 追徴税額は、調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分の合計で84万円でした。

 

※ 廣田の目👀
これを誤りのあった1件当たりで計算すると追徴税額は143万円となります。

 

法人全体の実地調査状況のまとめ
 法人は、消費税課税事業者に該当している場合が大半ですから、法人税と消費税を同時に調査されるケースがほとんどです。
 但し、赤字又は所得がないという申告の法人も多いので、連年赤字申告などの場合は、消費税のみの調査となります。

 

※ 令和元年10月に国税庁が発表した「平成30事務年度の法人税等の申告(課税)事績」では、「黒字申告割合は34.7%」ですから、65%以上の法人は赤字か所得がないということになります。

 

 

 消費税課税事業者である法人が実地調査を受けた場合、前述の法人税と消費税の合計を追徴されたと考えた方がいいでしょう。
 これを合計でみてみますと、
調査を受けた1件当たりでは、
本税と加算税の合計で約202万円追徴されたということですが、
調査の結果、何らかの誤りのあった1件当たりでみると、
約245万円追徴 されたということになります。

 

無申告法人の調査状況

 国税庁は「事業を行っているにもかかわらず申告をしていない法人を放置しておくことは、納税者の公平感を著しく損なうものであることから、国税庁では、登記情報等から法人を把握した上、無申告法人を的確に管理するとともに、こうした稼働無申告法人に対する調査に重点的に取り組んでいます。」と発表しています。

 

法人税

① 調査件数は、2.6千件(前年比103.5%)。

 

※ 廣田の目👀 
 無申告法人の調査件数は、全体の調査件数の3%弱です。
 法人の場合、税理士が関与しているところが大半であるため、無申告の件数は少ないと考えられます。
 仮に無申告となった場合であっても、税務署は登記情報等から納税義務者が把握できるため、調査ではなく行政指導で自主的に申告するよう促すことも可能なのです。
 その点で、登記などの登録がない個人よりとは状況が大きく異なります。
 なお、無申告法人は、調査の結果、法人税は赤字申告となる場合もかなりあると思います。

 

② 調査を受けた法人税無申告法人のうち、稼働している実態を隠し、意図的に無申告であった(不正あり)法人の割合は約18%でした。

 

③ 追徴税額は、調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分の合計で283万円です。

 

消費税

① 調査件数は、2千件(前年比100.5%)。

 

② 調査を受けた消費税無申告法人のうち、稼働している実態を隠し、意図的に無申告であった(不正あり)法人の割合は約17%でした。

 

③ 追徴税額は、調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分の合計で332万円です。

 

※ 廣田の目👀
法人は、無申告であっても売上の規模が大きいところが多いと考えられ、消費税の追徴金額も高額になります。

 

 

無申告法人の調査のまとめ

 

〇 無申告法人 1件当たりの追徴税額の状況
  ① 無申告法人 ② 無申告以外
  誤り有
対比
①/②
  万円 万円
法人税 283 262 1.1
消費税 332 136 2.4
合 計 615 398 1.5
(注) 無申告は、「誤りあり」として整理しています。

 

 法人税では資本金1億円以下の普通法人の税率は、二段階(800万円以下は15%、800万円超は23.2%)なので、
無申告法人とそれ以外の法人で、1件当たりの追徴税額に大きな差はありません。

 

 消費税については、そもそも申告をしていないので当然のことかもしれませんが、追徴税額は、無申告以外の場合よりもはるかに高額となっています。

 

 無申告の場合、申告誤りのペナルティとして加えられる税金(加算税)は、申告のある場合の加算税よりも高い率となります。
【参考】 加算税については、当コラムの「申告に漏れや誤りがあった場合、申告をしていないこと(無申告)が分かった場合の対応 №2」をご覧ください。

 

 

まとめ

 税務署は、申告書の内容を検討し、様々な資料・情報を収集検討し、
「これはおかしいのではないか」、
「ここは、調査を行い、追徴課税すべきではないか」という
納税者を抽出しています。
 そして、抽出した納税者の中で、調査の必要度合い、優先度合いを考慮して、
実地に調査を行うものを選定しているのです。
 このため、実地調査を受けた場合、過去の申告について調べられ、
法人では75% 何らかの誤りが見つかるということです。

 

 そして、調査で誤りが見つかった場合、1件当たり
法人税は 262万円  消費税は 143万円  両方だと 405万円
も追徴されるのです。

 

 もし、無申告だった場合、
法人税は 283万円  消費税は 332万円  両方だと 615万円
もの税金を支払わなければならないのです。

 

 これに加えて、国税では、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。
 更に、各種の法人住民税、事業税などの地方税も国税の調査結果に基づいて追徴されます。

 

 税金のことは、「面倒くさい」、「ばれない」、「いずれちゃんとしよう」と思っておられる方もいらっしゃると思いますが、ここまで説明してきましたように
調査に入られると金銭的に大変なことになります。

 

 また、取引先への調査なども行われますし、
ご自身で過去の取引や支出などについて詳細に説明することにもなり、
時間も奪われ、精神的負担も大きいものとなります。

 

 特に、申告をしていない場合、無申告だった場合については、これまで説明してきたように「割に合わない」ということは、追徴される税額を見てもご理解いただけると思います。

 

ご自身とご家族の生活、そして会社、社員や取引先を守るためにも、適切に対応しておくことをお勧めします。

 

100点満点の対応でなくていいのです。

 

税金のこと、申告のことについては、まず信頼できる税理士にご相談ください。

 

 

なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

※ このコラムの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2020/08/24
税務調査 いくら追徴されるの? 個人の方の場合

 2020年8月現在、税務署の調査は、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、調査を受ける納税者の実情に十分配慮することとなっており、無理な調査は行わないこととなっているようです。

 ただ、国税局の調査をはじめ、不正・多額の申告漏れが見込まれる事案の調査は、本格的に行われつつあるようです。
 皆さん、ご注意ください。

 

 ここでは、国税庁が2019年11月に発表した平成30事務年度の個人の所得税・消費税の調査事績を分析し、解説いたします。

 → 法人の調査事績についてもこのコラムに掲載していますのでご覧ください。税務調査 いくら追徴されるの? 法人、会社の方

 

※2020年8月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

【参考】国税庁が発表した調査事績の詳細はこちらをご覧ください。

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/shotoku_shohi/index.htm

 

 

※ 国税当局の発表する「事務年度」とは、その年の7月1日から翌年6月30日までの期間を示します。

 

 

【参考】 国税の調査とは

 国税の調査は、国税通則法(第74条の2から法第74条の6まで税目ごとに規定)に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で国税職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)です。
 「実地の調査」とは、この国税の調査のうち、当該職員が納税義務者の自宅や事業所等に実地に臨場して、質問検査等を行うものです。

 

 

【参考】 個人の実地調査

  個人の実地調査には、特別調査・一般調査と着眼調査があります。
1 特別調査・一般調査とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に取引先に対する調査を含め深度ある調査を行うものです。
  特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり 10 日以上を目安)を確保して実施しているものです。
2 着眼調査とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に短期間(原則3日以内)で行う調査です。

 

個人全体の実地調査の状況

所得税

① 調査の件数は約7万3千件(前年比101%)で、
そのうち調査を受けた過去の申告に何らかの誤りがあったのは83%です。

 

② 申告漏れ所得は、調査を受けた1件当たりでみると、
調査された全年分の合計で819万円を指摘されています。

 

③ 追徴税額(本来、申告時に支払っておくべき税金の差額(本税)と
申告漏れに対するペナルティとしての税金(加算税)の合計)
は、
調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分の合計で
131万円でした。

 

☞ 追徴税額の申告漏れ所得に対する比率は、約16%です。

 

※ 廣田の目👀
 国税庁が発表した②と③は、調査を受けた1件当たりの金額ですが、
これを誤りのあった1件当たりで計算し直すと、
申告漏れ所得は約988万円、

追徴税額の合計は158万円 ということになります。

 

 適法で間違いのない決算・申告を行っている納税者からすれば、
追徴される可能性は0(ゼロ)
ですから、納税者側に立って国税の
調査事績を分析する場合は、誤りがあった件数を
ベースに分析すべきと
私は考えます。

 なお、国税当局が調査1件当たりの係数を発表しているのは、
コスト分析・調査1件当たりのパフォーマンスの分析のためと
考えています。

 

 また、個人の調査事績では、法人の調査事績で発表されている
不正計算があったもの(隠ぺい又は仮装があったものは重加算税対象)
が公表されていません。その理由も公表されていません。

 

 この点について、私の国税当局在任時の経験から説明します。

 

 個人の重加算税の賦課割合は、年度、地域によって大きく変動する
ことがあるため発表しにくいのです。


個人の
全国の12国税局(事務所)と524税務署の調査事績をみると、
重加算税賦課割合は、税務署によって、国税局によって、年度によって
大きなばらつきがあります。

 

 その理由として考えられるのは、
個人の場合、重点的に調査を行う取引、業種などが地域や年度によって
変わるケースが多く、そのことで重加算税賦課割合も大きく変動する
ためだと思います。

 

 例えば、A税務署で、ある作物の生産農家を調査したところ、
現金売上を隠ぺいし、架空の労務費を計上するなどして
多額の所得を隠していたことが判明し、更に
「その作物、その地域の同業者では同じようにしている」という情報が
あったので、税務署はその同業者に対し、戦力を集中して重点的に調査を行います。

 

 そうするとその業種・地域の調査を継続している間のA税務署の
重加算税の賦課割合は非常に高くなります。

 

 ある税務署のある年度において重加算税賦課割合が100%というのは、
私が国税当局在籍時にいくつも目にしました。


だからと言ってその税務署管内の個人の納税者は全員が隠ぺい・仮装を
している訳ではないのですが、重加算税賦課割合100%という数字が
独り歩きする恐れはあります。

 

 一方でそういう調査対象がない地域、税務署、年度の重加算税賦課割合は
それほど高くはなりません。
私の経験からは、調査件数の多い税務署で20~50%というイメージです。
実際、重加算税賦課割合が0(ゼロ)の年度、税務署はいくつもあります。

 

 このように個人の場合、重加算税賦課割合は、年度、地域による開差が非常に大きいのです。

 

 開差が大きいと何が困るかというと、
発表した調査事績の重加算税賦課割合が高い時は、
「税金をごまかしている人、悪いことをしている人はそんなに多いのか。」という
印象を与えます。
 この印象は「多くの人がばれているのだから真面目に申告・納税しよう。」という
方向への動機付けには結びつかないのです。

 

逆に低い時は、
「(他の年度、地域と比較して)なぜ下がったのか、低いのか。国税の調査が
ゆるいのではないか。」と非難されることになります。

 

 法人(会社)の場合、帳簿の記帳・書類の保存をきちっと行うことが義務&当然
という前提であり、税理士が関与しているのが大半です。
 このため、法人は、税金について不正等が行われるケースはある程度の水準以下
であると推定できるのです。 実際、不正割合に大きな変動はありません。

 

 一方、個人は、そうではありません。
 所得の稼得形態、帳簿の記帳・書類の保存の程度、申告・納税に関する知識の程度、税理士の関与の有無などは、個人によってバラバラ、千差万別というのが現実です。
 個人の調査における重加算税の賦課割合を公表すると多種多様な個人の納税者について、その環境・状況に関わらず「個人の納税者は○○」といった十把一絡げの誤った印象を与える恐れがあり、メリットもないということで発表していないのだと思います。

 

消費税

① 調査件数は2万9千件(前年比101%)で、調査を受けた過去の申告に
何らかの誤りがあったのは82%です。

 

② 追徴税額は、調査を受けた1件当たりでみると、
調査された全年分の合計で約78万円でした。

 

※ 廣田の目👀
  これを誤りのあった1件当たりに計算し直すと、追徴税額は94万円です。

 

個人全体の実地調査のまとめ
 個人の場合、消費税課税事業者に該当しない方もいますので、
その場合は、所得税のみの調査となります。

 

 また、消費税課税事業者に該当する場合であっても、
ほとんど所得がない方は消費税のみの調査となることもあります。

 

 ただ実際の調査では、事業所得者など消費税課税事業者に対する調査が多く、
所得税と消費税を同時に調査・追徴されるケースが大半です。
このような場合、前述の所得税と消費税の合計を追徴されることになります。
 これを合計でみてみますと、
調査を受けた1件当たりでは、
209万円を追徴されたということですが、
誤りのあった1件当たりでみると 
約252万円 追徴 されたということになります。

 

無申告者、申告をしていない者に対する
特別調査・一般調査の状況

所得税
① 調査の件数は8.1千件(前年比105%)。

 

※ 廣田の目👀
 無申告者に対する調査件数は、前年から5ポイント増加しています。
 全体の調査件数に占める無申告者の件数の割合は
前年の約27%から約34%へと大幅に増加しています。
 これは、国税当局が個人の無申告者に注目し、
調査を重点化・強化していることを示していると思います。

 

 なお、国税庁は、調査した件数のうち何件に誤りがあったかを公表していませんが、国税当局は各種の資料情報の分析・検討に基づいて「申告義務がある蓋然性が高い」と判断して、実地に特別調査・一般調査を実施したのでしょうから、調査を受けた事案のほとんどは申告義務を指摘され追徴があったのだと思います。

 

② 申告漏れ所得は、調査を受けた1件当たりでみると、
調査された全年分の合計で2,035万円を指摘されています。

 

③ 追徴税額は、調査を受けた1件当たりでみると、
調査された全年分の合計で242万円でした。

 

☞ この追徴税額を申告漏れ所得に対する比率に換算すると約12%です。

 

※ 廣田の目👀
 無申告者の申告漏れ所得に対する追徴税額の割合(約12%)は、
実地調査の全体(約16%)よりも低くなっています。

 

 その理由は・・・
 申告をしている方の場合、
所得金額、所得控除、税額控除を一旦申告しているので、
調査で申告漏れとなっていた所得金額は丸々課税されるケースが大半です。

 

 一方、無申告の場合は、新たに所得金額、所得控除、税額控除を申告します。
 ですから、申告していなかった所得金額から
所得控除、税額控除を差し引いて追徴税額を計算することと
なりますので、課税対象となる所得は申告漏れ所得金額よりも
かなり少なくなります。

 

 また、所得税は、累進税率制度となっていますので、
調査を受けた方の課税される所得金額の多寡によって
適用される税率は5~45%(7段階)となります。
 申告漏れ所得金額が同じ場合でも追徴税額は
大きく異なることとなります。

 

 このため、申告漏れ所得に対する追徴税額の割合は、
無申告者の方が、実地調査の全体よりも低くなっているのです。

 

 国税庁は、無申告者以外の調査の状況について発表していませんが、
特別調査・一般調査の実績から無申告者の実績を差し引いて計算すると、
誤りのあった1件当たりの
申告漏れ所得は993万円、追徴税額は196万円となります。
 この追徴税額を申告漏れ所得に対する比率でみると約20%となります。

 

消費税

① 調査件数は9.6千件(前年比102%)。

 

※ 廣田の目👀
 無申告者に対する調査件数は、前年から2ポイント増加しています。
 全体の調査件数に占める無申告者の調査の割合は
34%(前年約33%)と非常に高い割合となっています。

 

 所得税と同様、国税当局が消費税の無申告者、
潜在している消費税課税事業者に注目し、
調査を重点化・強化していることを示していると思います。

 

 消費税の無申告者の調査件数は所得税(8.1千件)より
多いのです。
 これは、消費税は、売上(課税売上高)が課税標準となるため、
1千万円を超える売上があれば、人件費が多いことなどが原因で
所得金額が少なく、所得税は多くない場合でも消費税の課税事業者と
なるということが影響していると考えます。

 

 また、消費税は、消費者が負担する税金を事業者が預かり税務署に
申告して納める方式です。
 国税組織内では、消費税は「預かり金的性格の税」であるため、
より一層、適正に課税・徴収(申告・納税を確保)しなければならないと考えています。
 このため、消費税の無申告者の調査件数は所得税よりも多くなっているだと思います。

 

「売上高★は1千万円を超えているけど利益は少ない」という方は、
一度、信頼できる税理士に相談されることをお勧めします。

★ 課税売上高
消費税法上の消費税の課税対象となる取引(事業活動に付随して
行われる取引、例えば、事業用建物の売却なども含まれます。)
の売上高です。ほとんどの取引に係る売上高が課税売上高に該当
しますが、土地の売却収入、住宅家賃、社会保険診療報酬など、
消費税の非課税取引に係る収入等は除かれます。

 

② 追徴税額は、調査を受けた1件当たりでみると、
調査された全年分の合計で176万円でした。

 

無申告者の実地調査のまとめ
〇 無申告 個人 1件当たりの追徴税額の状況
 
① 無申告者
② 無申告以外
  誤り有
対比
①/②
 
万円
万円
所得税
242
196
1.2
消費税
176
75
2.3
合 計
418
271
1.5
(注) 無申告は、「誤りあり」として整理しています。
    特別調査・一般調査の実績です。 

 

 無申告の場合、そもそも申告をしていないので当然のことかもしれませんが、調査による追徴税額は、無申告以外と比較して非常に多額となっています。

 

消費税は、売上が課税標準となるため、1千万円を超える売上があれば、人件費が多いことなどが原因で所得金額が少ない場合でも、消費税は課税となるので追徴額は多額となっています。

 

 無申告の場合、申告誤りのペナルティとして加えられる税金(加算税)は、申告のある場合の加算税よりも高い率となります。
【参考】 加算税については、当コラムの「申告に漏れや誤りがあった場合、申告をしていないこと(無申告)が分かった場合の対応 №2」をご覧ください。

 

 昨今、有名芸能人などが無申告であったことが露見し、TV出演自粛など世間を騒がせる事件として報道されています。
 追徴される税額を見ても、無申告は「割に合わない」ということは、ご理解いただけると思います。

 

まとめ

 税務署は、申告書の内容を検討し、様々な資料・情報を収集検討し、
「これはおかしいのではないか」、
「ここは、調査を行い、追徴課税すべきではないか」という
納税者を抽出しています。
 そして、抽出した納税者の中で、調査の必要度合い、優先度合いを考慮して、
実地に調査を行うものを選定しているのです。
 このため、実地調査を受けた場合、過去の申告について調べられ、
個人では83% 何らかの誤りが見つかるということです。

 

 そして、調査で誤りが見つかった場合、1件当たり
所得税は 158万円  消費税は  94万円  両方だと 252万円
も追徴されるのです。

 

 もし、無申告だった場合、
所得税は 242万円  消費税は 176万円  両方だと 418万円
もの税金を支払わなければならないのです。

 

 これに加えて、国税では、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。

 

 更に、各種の住民税、事業税、国民保険料などの地方税も国税の調査結果に基づいて追徴されますし、公営住宅に入居している場合の家賃や幼稚園の保育料金などが増加することもあります。

 

 税金のことは、「面倒くさい」、「ばれない」、「いずれちゃんとしよう」と
思っておられる方もいらっしゃると思いますが、ここまで説明してきましたように
調査に入られると金銭的に大変なことになります。

 

 また、取引先への調査なども行われますし、
ご自身で過去の取引や支出などについて詳細に説明することにもなり、
時間も奪われ、精神的負担も大きいものとなります。

 

 特に、
 無申告だった場合や何らかの多額な所得を申告していない場合については、
「割に合わない」結果となるということは、上記の記事を見ていただいて
ご理解いただけると思います。

 

 ご自身とご家族の生活、そして従業員や取引先を守るためにも、適切に対応しておくことをお勧めします。

 

 100点満点の対応でなくていいのです。

 

 税金のこと、申告のことについては、まず信頼できる税理士にご相談ください。

 

 

なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

※ このコラムの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2020/08/24
京都産業大学会計人会での講演会

令和元年11月9日(土)「京都タワーホテル」での
京都産業大学 会計人会様主催の講演会に招かれました。

京都産業大学会計人会は、1998年10月に設立された京都産業大学ご出身の税理士、公認会計士という職業会計人の団体です。

講演会には、職業会計人のほかに、弁護士さんや京都産業大学経営学部の教員の方もご出席になられておりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

講演の演題は、「プロフェッショナル向け 税理士が知っておくべき税務署の実情 ~知っていれば対応策が見えてくる~」、講演時間は約2時間と通常(3時間)よりやや短い時間でしたので、税務署及び調査担当者の事情、スケジュール、思考・マインド・行動などとその対応策のポイントと、私が調査支援を行った最近の事案の調査対応(分析・検討、対応方法とその意図)などをお話いたしました。

講演会の休憩時間には、ある税理士さんから現在調査中の事案の対応策についてご相談がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、講演会後の懇親会にもお招きいただき、出席された方々のお話を

お聞かせ頂く機会を得ました。

出席者の皆様からは、

「長く税理士をしてますが、今まで聞いたことのない話ばかりでした。」

「初めて税務署の実情や事情、意思決定の過程や手続きが分かりました。」

「これまで何で?と思っていたことの理由が分かりました。」

「重加算税の要件を具体的な判例等に基づいて説明して頂いたので、これまでの自分の考えが間違ってなかったと自信が持てました。」

「税務調査では、調査担当者に反論などしてはいけないと思っていましたが、先生のお話を聞いて、意見をどんどん言って良いのだと良くわかりました。何よりお客さんのためにも色々と主張しないといけないのだということを強く気づかされました。なかなか先生のようにはいかないでしょうが、先生が講演の中でも仰っていたように、まずは、事前に良く検討して、これからトライしてみようと思います。」

というお声をいただきました。

 

 京都産業大学名誉教授であられる後藤文彦先生からは、
「本当にためになるお話でした。我々のように実務を知らない者には、とても新鮮で大変勉強になりました。特に、調査事例のお話は、まるで裁判での検察側と弁護側の丁々発止のやりとりを目の前で見ているかのようで大変面白かったです。本当に素晴らしい講演会でした。」
とのお言葉を頂きました。

 

 今回、私を指名していただいた世話役の先生からは、
「皆さんから好評を得まして、ご紹介させていただき良かったと思っております。講演は2時間でしたが、あっと言う間に過ぎました。
皆さん、興味深い内容でしたので、きっと集中してお聞きになられていたと思います。
今までは、大学の先生による学術的な研修や、実務家による税法などの改正点や解釈の研修内容が多かったので、廣田先生のような視点での講演を聞いたのは初めての事だと思います。
講演の後、質問されている先生もおられたので、きっと役に立ったものと確信しております。大学の先生方も刺激を受けておられたと思います。」
とのご評価を頂きました。

 

私自身も、短い時間ではありましたが、税務に携わる先生方の悩みや意見などを直にお聞かせいただくことができ、大変楽しく、有意義な時間と経験を頂戴でき、このご縁に大変感謝しております。

 後列、左端が私です。

******************************************

 

現状の税理士業務は、本当に大変です。

あらゆることに対応しないといけません。

経営者の方々は、そういった、何でも相談できる、何にでも対応してくれる士業の方を求めています。

一方、税理士に対する顧問先からの賠償請求事件も増えています。

 

他方、税務調査においては、若年税務職員の増加や税務署内での手続き等の問題などにより、段取りや仕切りの悪い調査も増えています。

 

孤独な先生方、

ズバリの答えが見つからなくて悩んでいる先生方、

正しいと思っているが、確証がないので何かお墨付きが欲しいと思っている先生方・・・

先生方の悩みは、多種多様で、深いものも多く、本当に大変だと、心底思います。

 

私の力が、皆様方のお役に立てばと、切に願っています。

ご相談、講演や勉強会などのご依頼をお待ちしています。

2019/12/08
税務調査事例 売上除外は⁈ 書類の保存がない!! 今後、再調査は? 大丈夫です! №3

※2019年11月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

前回のコラムの続きです。今回は、この調査事案を通じて私が感じた今後の参考事項について説明します。

なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

 

調査後の感想

 

今回の事案は、​

1 集計表に過少に記載又は記載していないことは重加算税の対象​となるか​ ​

2 請求書等がない、領収書等への受取人等の記載内容が不十分な​場合、必要経費及び消費税仕入税額控除対象と認められるか​

3 費用を中心に、資料の保存・内容が乏しいものが多数あり、取引の実態・事実の証明が困難なものが多いため、今回の調査終了後においても再調査の危険性が高いためそれをどう軽減するか​

を主なポイントとして対応しました。​

 

 今回の調査担当者は、

当方からの質問・主張等の中身・意図、正当性を直ぐに理解し、

適正な解決策に応じたので、比較的早期に双方が納得のいく終結

となりました!

 

◆ 当コラムで記載することはできませんが、調査で検討事項が提示された後における対応では、事実や法令適用の主張以外にも交渉テクニックはあります。

円滑な処理に向けて、双方が納得のいく形に持っていく、そのために交渉で突く項目は、調査担当者の事情や調査事案の状況などに応じてそれぞれです。

勿論、事案等に応じた交渉方法・テクニックは当然あります。
それが必要であり、有効なのです。​
 

e.g. 弱点、バーター、信頼関係、落としどころ​ など

 

税務調査へ対応される方へ

お伝えしたいこと

 

 実際の税務調査では、調査担当者が明確な根拠を示さずに

「○○は重加算税対象です」と指摘するケースがあると思います。

​ 特に調査の初期段階において、そのような指摘を受けることが多いのではないでしょうか?

 その場合には、法令等を十分に理解し、事実を的確に把握した上で、適切に質問・主張していただきたいと思います。​

 

 また、調査対応においては、調査担当者の指摘にだけ対応しているということも多いでしょう。

 これは調査担当者の出方を見てから対応することですから、最小限の労力で防御と反撃を行うことであり、ある意味では有効な手法と考えられます。​

 ただ、この場合、調査担当者主導となり、対応が後手に回り、事前に最良の手を打っておけば防げたにも拘らず取り返しのつかない不利な状況・結果となる危険も内包しています。​

  特に調査を受けている方が十分な資料を保存していない場合や事実を正確に把握できない場合などは、事前に税理士が問題となりそうな事項を全て抽出し、検討・確認することが非常に重要です。


① 調査担当者には、五月雨式に問題点などを指摘するのではなく、問題点・検討事項については、早めにまとめて指摘するよう依頼する(=調査担当者の腹積もり、全ての手の内を早く把握する)。

② 調査担当者から問題点等の指摘を受けた場合には、それに的確に対応(説明・反論・抗弁等)を行うとともに、計上漏れとなっている保存資料の乏しい費用など納税者側が有利となる要素について追加認容を積極的に求める。

③ 調査担当者の全ての主張と当方の全ての主張を同じテーブルに乗せて、ぶつけ合い、調整しつつ決着を図る。

 

 手間がかかって大変と思うかもしれませんが、税務調査ではこのように全方位的に対応することが、結果的に一番効果的・効率的です。


 とは言っても、実際にこのような対応を行うのは、非常にハードルが高いのかもしれません。​

 確かに、このような対応を的確に、効率的に行うには、勿論、相当な知識とスキルが必要です。

 実際に調査を受けておられる方にとっては、次々と問題点を指摘されるより、まとめて指摘を受けて対応する方が、精神的、時間的な負担を軽減できます。

 税理士も、調査担当者の手の内を全て見た上で対応する方が対応しやすいものです。

 また、資料などが無くても、納税者に有利な事実については、積極的に主張すべきです。

 更に、全ての問題点を指摘された上で対応することで事後における再調査の危険性を大きく低減できます。

 

 このような観点から、私は、常にこのような対応を積極的に実施しています。

 まずは、少しずつでもこのような対応方法にトライしていただければ、スキルは確実に上がります!

 対応策がわからない場合は、

お気軽に当事務所へご相談ください。

 

 3回にわたって掲載しました今回の調査事例については以上で終わります。 参考になれば幸いです。

※このコラムの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

◇ 当事務所の取組方針

一般の方だけでなく、税理士など資格のあるプロの先生方が 

税務に限らず

「この場合、どう対応したらベストなの?」 

「これって、本当にこの判断でいいの?」

「今更、誰にも聞けない…これってどうしたらいいの?」 

などと迷う時に 

① 事実・実情・証拠などを確認し、最適な助言を、早期に、
確実に行います。

② ご要望に応じ、最適の対応を行うための具体的な支援
(資料作成、面接‣
出張、複数関与、複数受任・共同受任・復代理など)を行います。

 スポットで支援することが業務です。

「顧問先を奪われるのでは?」という心配は不要です!

 

2019/11/29
税務調査事例 売上除外は⁈ 書類の保存がない!! 今後、再調査は? 大丈夫です! №2

※2019年11月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

前回のコラムの続きです。前回のコラムでは、調査の概略を説明しました。

今回は、皆さんの関心が一番高いと思われる調査の結果から説明します。

なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

 

6 結果​

⑴  人事異動直後着手の特別調査事案で多額の申告漏れがありましたが、

依頼を受けて1か月半後に終結(交渉は合計6回)。​

⑵  遡及年分  当初の7年分から4年分に。​

⑶  売上 前記5の⑴のみ加算。

このうち、5年前から新たに売上の振込先とした口座への入金分は
重加算税対象、それ以外は過少申告加算税対象。​

⑷  外注費  調査の土俵に乗せた上で、全て認容。​

⑸  その他の費用 調査の土俵に乗せた上で、全て認容されただけで
なく、未計上分は追認。​

以上の結果、

追徴税額(国税・地方税の本税+附帯税)は、

当初調査担当者が示した金額の40%弱となりました。 ​

 また、私が確認したこと以外に新たな事実がないことを前提に、
費用に関する部分を含めて今後の再調査の恐れはなくなりました

 

では、このような結果となったのは、どのように対応したからか
について
説明いたします。

 

 

6 交渉状況(主要項目) 

次の点について、極めて穏やかに質問、主張いたしました。​

⑴ 隠蔽又は仮装の有無及び偽りその他不正の行為の有無​

・ 5の⑴について、国税通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等
の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」たと判断した課税
要件事実とその証拠は何ですか。​

・ 本件については、重加算税に係る事務運営指針 ※ に規定する賦課基準における隠蔽

又は仮装に該当する場合のどの項目に該当するのですか。その事実・証拠は何ですか。​

「申告所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/pdf/02.pdf

・ 重加算税の賦課要件を充足するには、過少申告行為とは別に隠蔽又は仮装と評価すべき
 行為の存在を必要としているものであると解されています。

調査官の指摘する事実は、事務運営指針に規定されている項目にズバリ合致しているとは考えられません。​

むしろ、本件は、重加算税を取消した平成27年7月1日裁決(所得税白色申告者において、収支内訳書に虚偽記載をしただけでは、隠ぺい仮装があったとは認められないと判断した事例)と非常に似通っていると考えられます。​

 具体的に事実をみてみますと…

 前回のコラムの「3 私が把握した事実」を
下記の項目に分けて主張しました

① 売上金は・・・
② その入金のあった預金口座の通帳は・・・​
③ その通帳及び売上請求書控えは・・・
④ 申告漏れ所得は・・・
⑤ 集計表に根拠のない額を記載する行為は・・・​

以上から、A氏の行為は・・・ 重加算税の賦課要件を充足しないと考えるべきでは
ないですか。​

・ 偽りその他不正の行為のない年分については遡及年分数を考慮すべきではないですか
(国税通則法第70条第4項第一号)。​​

⑵ 費用について

 当方の確認作業により、領収証などは保存していないが、A氏の具体的で詳細な供述
及び現金の流れや取引の状況からみて、支払いがあったことが合理的に推認できることを主張・立証し、これらについては追認されるべきと主張しました。​

 勿論、現在計上しているものに関する否認防止(認容)については、様々な角度から立証・主張しました。​

 

以上のように対応いたしました。

ただ、このような対応を行うためには、その前提として
とても重要なポイントがあります。

ここが私どもの取り組みの肝の部分となります。

 

◆ ポイント1​

私は、「全容を解明・把握することでしか、的確な主張・反論を適時に
行うことはできない」とのポリシーで業務を行っています。​

今回の事案についても、私自身が調査官の立場で更正処理を行うことを
前提に
確認等を行う、つまり私自身が調査を行うとのスタンスで、事実の確認・聴取を徹底して行いました。​

 

これにより、税務署が把握したと思われることよりも

多くの事実を把握・確認することができ、税務署との交渉前に

的確な対応策を検討し、手を打つことができるのです!

 

◆ ポイント2​

 実は、調査担当との1回目の交渉では、前述の5の⑴だけ指摘された
だけでした。​

 私は、当方が的確な反論を行った場合、その対抗措置として、
税務署は指摘事項を増やす(調査を追加・拡大する)であろうことを
想定しました
。​

 このため、1回目の交渉時において
「後々、次々と問題点を指摘されたり、反面調査をされたりすると調査が長引く。また、調査終了後、新たな情報による再調査となった場合、本件以上に納税者の心身の負担が大きくなる。このため、全体を調査し、検討事項や問題点をまとめて開示して欲しい。」 と依頼しました。​

 その結果、2回目の交渉時に⑵、⑶、⑷がまとめて指摘されたというのが実態です。​

これにより、問題事項を全て土俵に乗せ、事案の全体像を理解した上で
対応策を検討し、双方のストロングポイント、ウィークポイントを
見極めて交渉を行うことができるのです!​
更に、この対応で再調査の危惧を削減できるのです!
​!

 

∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞

今回はここまでです。

次回はこの事案の調査を通じて参考となったことなどについて、
記載します。

 

※ 当コラムなどの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

◇ 当事務所の取組方針

一般の方だけでなく、税理士など資格のあるプロの先生方が 

税務に限らず

「この場合、どう対応したらベストなの?」 

「これって、本当にこの判断でいいの?」

「今更、誰にも聞けない…これってどうしたらいいの?」 

などと迷う時に 

① 事実・実情・証拠などを確認し、最適な助言を、早期に、
確実に行います。

② ご要望に応じ、最適の対応を行うための具体的な支援
(資料作成、面接‣
出張、複数関与、複数受任・共同受任・復代理など)を行います。

 スポットで支援することが業務です。

「顧問先を奪われるのでは?」という心配は不要です!

 

2019/11/11
税務調査事例 売上除外は⁈ 書類の保存がない!! 今後、再調査は? 大丈夫です!

※2019年10月配信当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。

今回は、ある税理士先生から緊急の依頼で調査を支援した事例を紹介いたします。
少しボリュームがあるので何回かに分けて掲載します。

なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

1 調査を受けた方 A氏​
・ 個人  所得税:白色申告、消費税:本則​
・ 税理士関与の有無:5年前まで税理士なし(偽税理士へ依頼)

5年前、税務署から消費税申告などについて連絡があり、​その処理を税理士に依頼。
翌年から年1関与(本人作成の集計表等から収支内訳書・申告書を作成・提出) ​

2 調査の状況​

税目: 所得税・消費税
時期: 税務署の人事異動直後​
担当: 個人課税 特別調査担当

☆ 私の関与経緯:

関与税理士から、調査初日、午前中の調査が終わって緊急の連絡が入り、
税理士事務所に伺い、関与
税理士の先生とA氏とその奥様​(事業専従者)に面接しました。​

3 私が把握した事実

① 日々記載しているのは経費に関するメモだけ​

② 毎月、集計表を作成(収支内訳書は、申告時に当該集計表から税理士等が作成)​

③ 売上は、ほぼ100%本人預金(5年前1口座、5年前から2口座)へ振込​

④ 集計表の売上金額は、以前申告を依頼していた偽税理士の指導で、​適当に過少な数字を記載​

⑤ 直近4年分の申告時、税理士には当該集計表と領収証だけを提示​

⑥ 当該集計表、売上が振り込まれた預金通帳(2つ)、売上の請求書控えなどは全て保存しており、
  それらを調査初日に納税者自ら提示​

⑦ 申告漏れとなった所得金額は当該預金通帳の残高として留保​

⑧ 外注費は、業者が請求書・領収書を発行しない又は領収書等に正確な連絡先を記載しない
(外注先は自身の取引が特定される​書類を作成する位なら「取引しない」と言う)場合が多い​

⑨ 自動販売機で購入し外注先などに配った飲料水の費用、また冠婚葬祭の費用など領収書が
ないものは経費未計上​

⑩ 5年前に税務署から是正指導あり

 

4 事案の状況

年分 X-6 X-5 X-4 X-3 X-2 X-1 X
所得税 白色申告 期限内 期限内 期限内 期限内
修正申告
期限内 期限内 期限内 期限内
消費税 免税 免税
事業者
期限内
本則
期限後
本則
期限内
本則
期限内
本則
期限内
本則
期限内
本則
翌年3月確定申告時の税理士関与状況 偽税理士 偽税理士
偽税理士
偽税理士 年1回 年1回 年1回 年1回
当初2,300 この処理から現在の税理士が関与
① 申告売上(万円) 1,200
1,400
2,500 2,000 1,300 2,000 2,000
 実際の売上振込の状況
② 本人名義口座 1 1,700 1,800 2,500 2,100 1,400 2,300 2,200
③ 本人名義口座 2 0 0 0 500 400 800 200
④ 合   計(②+③) 1,700 1,800 2,500 2,600 1,800 3,100 2,400
⑤ 申告との差額(④-①) 500 400 0 600 500 1,100 400

 

5 調査官の指摘(主張)事項

⑴ 売上の殆どは、本人名義の2つの銀行口座に振込まれており、​通帳を確認すれば、
正確な売上金額を容易に
把握できた筈である。​

にもかかわらず、毎月集計表を作成する際に、
① 7年間、従来からの決裁​口座への入金については、無作為に過少な金額を記載し、
② 4年前からは、別の口座​へも入金させて、その全てを集計表に記載していない

 ことにより​売上を除外している。​

⑵ 現金売上は、取引数は少なく単価も少額であるが、一切集計表に​記載しておらず
除外している。​

⑶ 外注費については、領収書に住所や電話番号が記載されていない​ものが多数あり、
支払った相手を
確認できないため否認。​

⑷ 請求書に記載不備等が多数あり、消費税の仕入税額控除は否認。​

⑸ 以上から

⑴、⑵については、意図して脱漏・除外したと認められる​ため
7年遡及し
 重加算税対象、
⑶、⑷は、過少申告加算税対象となる。

皆さん、​
 どう対応しますか?​
 どう対応すべきだと思われますか? ​
 どういう結果になると思いますか?​

 

 

∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞

 

結論を先に言いますと…

追徴税額(国税・地方税の本税+附帯税)は、
​当初調査担当者が示した金額の40%弱となりました。 ​

今回はここまでです。

調査の結果などについては、次回記載します。

※ 当コラムなどの内容等に関する質問は一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

◇ 当事務所の取組方針

一般の方だけでなく、税理士など資格のあるプロの先生方が 

税務に限らず

「この場合、どう対応したらベストなの?」 

「これって、本当にこの判断でいいの?」

「今更、誰にも聞けない…これってどうしたらいいの?」 

などと迷う時に 

① 事実・実情・証拠などを確認し、最適な助言を、早期に、確実に行います。

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2019/10/30
税務調査事例 現金売上の脱漏・除外を過少申告加算税に! 書類の保存がない費用の追認を獲得!

今回は、ある税理士先生からの依頼で私が調査を支援した事例について紹介いたします。

なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。

1 調査を受けた方 A氏

納税地: 関西地区 大阪市内

業 種: オーナー社長、不動産貸付業を兼業

税理士の関与: 法人決算のみ

 

2 調査の内容

税 目: 所得税

調査官の当初の指摘(主張):

① 主宰法人に物件を貸付けているが、その家賃(法人は未払計上)を申告していない。

② その他の貸付物件について、一部の物件の家賃(現金受領)を申告していない。

③ ①、②の取引等に係る書類は保存されており、A氏は当該売上を明白に認識していた筈である。

 にも拘らず申告していない、申告書に添付された収支内訳書にも記載していないのは、意図して脱漏・除外したと考えられ、重加算税対象と考えられる。

  ④ 費用については、書類を確認したところ過不足はない。

 

3 調査担当者との交渉ポイント

次の点について、極めて穏やかに質問、主張いたしました。

⑴ 2の③について、国税通則法第68条第1項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」たと判断した課税要件事実とその証拠は何ですか。

⑵ 費用について、当方の確認作業により、領収証などの書類は保存していないが、A氏の具体的で詳細な供述及び現金の流れや取引の状況からみて、支払いがあったことが合理的に推認できる事項については追認していただきたい。

 

4 調査の結果

⑴ 申告していなかった売上については、全て過少申告加算税の対象となりました。

⑵ 支払ったことが合理的に推認されるものについては追認(約19%加算)されました。

 

〇 調査後の感想

 不動産貸付による売上は、不特定多数の顧客に現金で物品を販売する場合の売上と比較すると、正確な売上を明確に認識でき易いと考えることはできます。

 しかし、正しい売上を認識していたものの過少申告を行ったということだけで、重加算税の課税要件である「隠蔽し、又は仮装し」たことにはなりません。

 そうでなければ、例えば、複数の勤め先からの給与所得がある方や複数の年金所得のある方が、一部の収入(所得)の申告を忘れた場合も重加算税の対象となってしまいます。

   過少申告については、意図的か意図的でないかに関わらず国税通則法第65条を適用します。

※ 当初の申告が期限後申告の場合は、無申告加算税(国税通則法第66条)となります。

 そしてその過少申告に「隠蔽し、又は仮装し」た事実があるかどうかを判断し、その事実があれば国税通則法第68条を適用するのです。

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 極めて個人的見解ですが、法人税の重加算税の取扱い通達(事務運営指針)では、「隠蔽し、又は仮装し」た事実の例として「脱漏」や「除外」の事実があった場合を掲げていますが、この点については以前から大いに疑問を感じています。

 まず「脱漏」や「除外」の定義がないので、どういうことが該当するか分からないのです。

 調査担当者が、「脱漏している」、「抜いている」、「除外している」とよく言いますが、それは唯一の意味を示す事実ではなく「評価」ですよね?

 また、帳簿書類への記載において「脱漏」や「除外」があると、それは「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」となるのでしょうか?

 国税庁の通達には語句の定義がないので一般的な語句の意味を見ると、次のとおりとされています。

  脱漏 あるはずのものが抜け落ちること。遺漏。あるべきものが漏れ落ちること。

  除外 ある範囲や規定の外におくこと。取り除くこと。その範囲には入らないものとして取りのけること。

虚偽 うそ偽り。真実でない事を、誤ってまたは故意に、真実だとすること。真実ではないと知りながら真実であるかのようにみせること。

 この一般的な意味を見ると、どうしてこの(特に「脱漏」)意味するところだけで、「隠蔽し、又は仮装し」たことを示す事実に直結するのかよく理解できないのです。

 「その取引を故意に○○の方法で帳簿に記載せず、つまり脱漏・除外することにより隠蔽した」ということであれば、理解しやすいのですが…

 この項目、文言は、法人税以外の税目の通達には記載していないことも考えると、国民(納税者)が正確に理解できるように明確に定義しておく必要があると思います。

※ 過去の裁判所の判決文・判断をそのまま持ってきたのではないのでしょう。

 今後「脱漏」などを理由として重加算税を賦課される事案に携わった場合は、この疑問点を明らかにしたいと考えています。

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 今回の調査担当者は、当方からの質問等に対し、直ぐ重加算税の課税要件事実がないことを理解したので、違法な課税(誤った重加算税賦課)となりませんでした。

 全国の調査では、調査担当者が、特に調査の初期段階で、明確な根拠を示さずに「重加算税対象になると考えます」と指摘しているケースもあると思います。

 そのような場合には、法令等を十分に理解し、事実を的確に把握した上で、適切に質問・主張していただきたいと思います。 対応策がわからない場合は、お気軽に当事務所へご相談ください。

 

 次に、領収証などの書類の保存がない費用については、諦めることが多いのではないかと思います。

 しかし、支払いがあったことが合理的に推認できる事項については、間接証拠を積み上げるなどして、合理性を高めて追認するよう調査担当者に果敢に主張すれば、追加認容を勝ち取れます。

 この手法は、税務調査や査察調査においても事実の認定方法として行われており、国税不服審判所における裁決のための調査においても当然行われています。

 知識とスキルは必要ですが、調査を受けている方に有利な事実・主張となりますので、私は、常に積極的に実施しています。 対応策がわからない場合は、お気軽に当事務所へご相談ください。

 

 以上、参考になれば幸いです。

 

2019/09/03
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