税務調査コラム
- 税務調査を受けるといくら追徴されるの?
国税庁が2018年12月に発表した平成29事務年度の調査事績をみると・・・
⑴ 個人の納税者
イ 個人の所得税の実地調査では、
① 調査を受けた方のうち83%が過去の申告に何らかの誤りがあり、
② 調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分で800万円の申告漏れ所得があり、
③ 調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分で
本税と加算税を合わせて130万円の税金を追徴
されているということです。国税庁の発表した②と③は、調査を受けた1件当たりとなっていますので、これを誤りのあった1件当たりで計算し直すと、
申告漏れ所得は約977万円、追徴税額合計は約157万円 となります。ロ 個人の消費税の実地調査では、
① 調査を受けた方のうち82%が過去の申告に何らかの誤りがあり、
② 調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分で
本税と加算税を合わせて約72万円の税金を追徴
されているということです。これを誤りのあった1件当たりで計算し直すと、追徴税額合計は約88万円となります。
ハ 個人の調査のまとめ
個人の場合、調査対象年分の課税売上高が1千万円未満の方の場合、消費税免税事業者となるので所得税のみの調査となり、逆に課税売上高が1千万円以上の場合、消費税課税事業者となりますが、ほとんど所得がない方は消費税のみの調査となることもあります。
ただ実際は、所得税と消費税を同時に調査するケースが大半です。
ですから、個人の実地調査を受けた場合、前述のイとロの合計を追徴された方が多いのです。これにより、イとロの合計でみてみますと、
調査を受けた1件当たりでは、本税と加算税の合計で約202万円追徴されたということになり、調査の結果、何らかの誤りのあった1件当たりでみると、
約245万円追徴されたということになります。⑵ 法人の納税者
イ 法人税の実地調査では、
① 調査を受けた法人のうち75%が過去の申告に何らかの誤りがあり、
② 調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分で1,023万円の申告漏れ所得があり、
③ 調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分で
本税と加算税を合わせて199万円の税金を追徴
されているということです。
これを非違のあった1件当たりに計算し直すと、
申告漏れ所得は約1,369万円、追徴税額合計は約267万円
となります。ロ 法人の消費税の実地調査では、
① 調査を受けた方のうち59%が過去の申告に何らかの誤りがあり、
② 調査を受けた1件当たりでみると、調査された全年分で
本税と加算税を合わせて79万円の税金を追徴
されているということです。
これを非違のあった1件当たりで計算し直すと、
追徴税額合計は約136万円となります。⑶ まとめ
税務署は、申告書の内容を検討し、様々な資料・情報を収集検討し、「これはおかしいのではないか」、「ここは、調査を行い、追徴課税すべきではないか」という納税者を抽出しています。そして、抽出した納税者の中で、調査の必要度合い、優先度合いを考慮して、実地に調査を行うものを選定しているのです。
このため、実地調査を受けた場合、過去の申告について調べられ、個人では83%、法人では75%の方で何らかの誤りが見つかるということです。
そして、調査で誤りが見つかった場合、
個人の 所得税は 157万円! 消費税は 88万円!
法人の 法人税は 267万円! 消費税は 136万円!
もの税金が追徴されるのです。これに加えて、国税では、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。
更に、各種の住民税、事業税、国民保険料などの地方税も国税の調査結果に基づいて追徴されますし、公営住宅に入居している場合の家賃や幼稚園の保育料金なども増加することもあります。
- 記帳や記録、帳簿や書類の保存は最も重要です!
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私どもは、お引き受けした仕事の中で、記帳や記録、帳簿や書類の保存について適切に助言・支援いたします。
例えば、まず、記帳や記録、帳簿や書類の保存は、何故必要なのかからご説明します。帳簿や請求書などの書類は、所得税や法人税の所得金額の計算上においては、売上、原価、費用などの証拠として必要なものですが、仮に記帳や保存がない場合でも、支払った事実や支払いに合理性があれば認められる場合もあります。
所得税や法人税は、所得金額を計算すれば税額が算出されるというものではありません。
そこから、税法上の調整(損益通算、税務上の調整、純損失等の繰越控除、所得控除など)を行い、課税標準を算出します。
この課税標準に対する税額を計算したのち、各種の税額控除(源泉徴収税額、住宅借入金等特別控除、外国税額などいずれも証明書類が必須)を行って最終的に納付すべき税額を算出します。一方で、消費税の計算は、簡単に言えば、所得金額の計算というものではなく、課税標準に対する税額と税額控除の計算ということになります。
まず、売上に対する消費税額を計算します。
次に、仕入や経費などに対する消費税額を計算します。
売上に対する消費税額から仕入や経費などに対する消費税額を差し引くのですが、これは税額の控除です。これを仕入税額控除と言います。消費税法30条7項では、仕入税額控除について帳簿及び請求書等の保存がない場合には適用できないと規定されています。
つまり、消費税においては、帳簿及び請求書等がなければ、税額控除は「認められない」、なければ差し引かれないということになります。
これは、実際は経費を支払う際に支払った(負担した)消費税をもう一度支払うことになるので、大変な負担となります。つまり、消費税では、帳簿や請求書などの書類は、消費税の計算上必須のものなのです。
これらの書類がちゃんと記載・保存されていれば、税務調査において、納税者にとっては防具、盾となりますが、もしなければ、防具なしに戦うことにほかなりません。
そうなると、調査の結果は、本来支払う必要のない莫大な消費税を支払うこととなります。
私どもは、調査以後、そのような事態とならないように、調査の途中において、調査を受けておられる方の実情を確認して、その方に合った記帳や記録、帳簿や書類の保存などの方法について適切に助言・支援いたします。