税務調査コラム
申告に漏れや誤りがあった場合、申告をしていないこと(無申告)が分かった場合の対応 №2
2019.08.28
2 納める税金が少な過ぎた場合、納めるべき税金があるのに申告していなかった場合や還付される税金が多過ぎた場合
前回コラムを投稿・更新した後、ある税理士先生から少し大きな不正が見つかった調査案件のヘルプ要請が入り、急遽対応していたため、表題のコラムの更新ができず申し訳ありませんでした。
さて今回は、申告に漏れや誤りがあった場合、申告をしていないこと(無申告)が分かった場合のうち、納めるべき税金が少なすぎた場合や申告していなかった場合の対応について説明します。
なお、当サイトの意見にわたる部分は、私見であることをあらかじめお断りしておきます。
最初に…
確定申告期限までに申告した内容を検討したところ納める税金が少な過ぎた場合や還付される税金が多過ぎた場合、また納めるべき税金があるのに申告していなかった場合については、気が付いた時点で、できるだけ早く、修正申告又は期限後申告(以下「修正申告等」と言います。)を行い、誤った内容、つまり過少申告や無申告の状態を一部だけ直すのではなく、完全に訂正し、正しい形にすることをお勧めします。
できるだけ早く… の理由について以下で説明します。
⑴ 多くの場合、新たに納める税金がのほかに過少申告加算税などが課されるからです!
税務署の調査を受けた後、ご自身で修正申告等をしたり、税務署の更正・決定を受けたりすると、新たに納める税金(以下「追徴本税」と言います。)が少額な場合を除き、追徴本税のほかに、いわゆる罰金的なものとして過少申告加算税や無申告加算税などの加算税が課されるほか、いわゆる遅延利息的なものとして延滞税が課される場合があります。
(注)加算税は、加算税の金額が5千円以上となる場合に賦課され、5千円未満の場合は賦課されません。
過少申告加算税又は無申告加算税が課される場合について簡単に説明します。
イ 過少申告加算税→当初申告を法定申告期限内に提出していて修正申告等により新たに税金を納める場合
過少申告加算税の金額は、追徴本税(注1)が5万円以上※の場合、その10%相当額(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%)にもなります。
例えば、修正申告を行ったことにより、追徴本税を30万円納付することとなった場合、過少申告加算税は30,000円となり、それだけ余分に支払わなければならなくなるのです。
しかし、税務署の調査を受ける前など(注2)に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税がかからない場合や軽減される場合があります。
ですから、誤りに気が付いたら、なるべく早く、できれば税務署の調査を受ける前に修正申告をすることをお勧めするのです。
加算税とは別に、追徴本税を完納するまでの期間に応じて延滞税が課される場合があります。
※ 累積増差税額
国税通則法第65条第1項の修正申告又は更正前にされたその国税についての修正申告書の提出又は更正に基づき同法第35条第2項の規定により納付すべき税額の合計額(当該国税について、当該納付すべき税額を減少させる更正又は更正に係る不服申立て若しくは訴えについての決定、裁決若しくは判決による原処分の異動があつたときはこれらにより減少した部分の税額に相当する金額を控除した金額とし、次項の規定の適用があつたときは同項の規定により控除すべきであつた金額を控除した金額とする。) (注) 1 修正申告により納付すべき税額(修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について修正申告書の提出又は更正があつたときは、その国税に係る累積増差税額※を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときは、過少申告加算税の額は、国税通則法第65条第1項の規定により計算した金額に、その超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは、当該納付すべき税額)に5%を乗じて計算した金額を加算した金額とする。 2 修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、過少申告加算税は5%となります。(国税通則法第65条第1項) なお、平成29年1月1日以後に法定申告期が到来するもの(平成28年分以後)については、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る国税通則法第74条の9第1項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知がある前に行われたものであるときは、過少申告加算税は適用されません。(国税通則法第65条第5項) 過少申告加算税を簡単に説明すると、次のとおりになります。
3 修正申告を行った場合でも、当初の確定申告が期限後申告の場合は無申告加算税がかかる場合が あります。 |
ロ 無申告加算税 → 法定申告期限内に申告をしておらず、期限後申告等により新たに税金を納める場合
(イ) 通常の期限後申告の場合
無申告加算税は、期限後申告等※により納めることになった税金が4万円以上の場合、その15%相当額(①当該期限後申告又は税務署による決定により納める税金が50万円を超えている場合又は、②期限後申告書を提出又は税務署の決定があつた後に修正申告書の提出又は更正があり当該修正申告又は更正により納める税金(累積納付税額(注1)を加算した金額)が当初の期限後申告又は決定の納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合は、その超えている部分については20%)になります。
なお、無申告加算税についても過少申告加算税の(注2)と同様、平成29年1月1日以後に法定申告期が到来するもの(平成28年分以後)については、期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る国税通則法第74条の9第1項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知がある前に行われたものであるときは、無申告加算税は5%となります(国税通則法第66条第6項)(注2)。
無申告加算税について簡単に説明しますと、次の通りとなります。
・ 期限後申告がその申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について
更正等があるべきことを予知してされたものでない場合において、 ① 調査に係る通知前に行われた場合、無申告加算税は5% ② 調査に係る通知後に行われた場合、無申告加算税は10%(50万円超の部分は15%) ・ 期限後申告がその申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について 更正があるべきことを予知してされたものである場合、無申告加算税は15%(50万円超の 部分は20%) ・ 期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合、 無申告加算税は課されない。 ・ 期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合に該当して されたものであり、かつ、法定申告期限から一月を経過する日までに行われたものの場合、 無申告加算税は適用されない。 |
例えば、法定申告期限までに特に正当な理由等なく申告をしておらず、期限後申告を行ったことにより、追徴本税を30万円納付することとなった場合、無申告加算税は45,000円となります。
もし、期限後申告や期限後申告後の修正申告で追徴本税を80万円納付することとなった場合だと
無申告加算税は 50万円×15%+30万円×20% = 135,000円 にもなります!!
しかし、税務署の調査を受ける前など(注2)に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税がかからない場合や軽減される場合があります。
ですから、誤りに気が付いたら、なるべく早く、できれば税務署の調査を受ける前に期限後申告をすることをお勧めするのです。
加算税とは別に、追徴本税を完納するまでの期間に応じて延滞税が課される場合があります。
※ 当初の確定申告が①当該期限後申告又は税務署による決定、②期限後申告書を提出又は税務署の決定が
あつた後に修正申告書の提出又は更正の場合は無申告加算税がかかる場合があります。
(注)
1 累積納付税額 国税通則法第66条第1項第二号の修正申告書の提出又は更正前にされたその国税についての次に掲げる納付すべき税額の合計額(当該国税について、当該納付すべき税額を減少させる更正又は更正若しくは同法第25条の規定による決定に係る不服申立て若しくは訴えについての決定、裁決若しくは判決による原処分の異動があつたときはこれらにより減少した部分の税額に相当する金額を控除した金額とし、第5項において準用する前条第4項(第一号に係る部分に限る。以下この項及び第五項において同じ。)の規定の適用があつたときは同条第4項の規定により控除すべきであつた金額を控除した金額とする。)をいう。 一 期限後申告書の提出又は同法第25条の規定による決定に基づき第35条第2項の規定により納付 すべき税額 二 修正申告書の提出又は更正に基づき第35条第2項の規定により納付すべき税額 2 期限後申告書又は第一項第二号の修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたものであるときは、その申告に基づき第35条第2項の規定により納付すべき税額に係る第1項の無申告加算税の額は、同項及び第2項の規定にかかわらず、当該納付すべき税額に5%を乗じて計算した金額となります。(国税通則法第66条第6項) 3 期限後申告書又は国税通則法第66条第1項第二号の修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、無申告加算税は10%となります。 また、期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、無申告加算税はかかりません。(国税通則法第66条第1項) 4 第1項の規定は、期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について第25条の規定による決定があるべきことを予知してされたものでない場合において、期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合に該当してされたものであり、かつ、法定申告期限から一月を経過する日までに行われたものであるときは、適用しない。(国税通則法第66条第7項) |
(ロ) 短期間に繰り返し無申告(期限後申告)を行った場合の加算税
期限後申告等 ※ があった場合において、その期限後申告等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、その期限後申告等に係る税目について無申告加算税(調査による決定の予知後に課されたものに限ります。)を課されたことがあるときは、その期限後申告等に基づき課する無申告加算税の額は、その期限後申告等に基づいて納付すべき税額に10%の割合を乗じて計算した金額を加算した金額となります。
つまり、5年間で期限後申告を繰り返すと、2回目以降の無申告加算税は通常の15%(50万円超の部分は20%)に、10%が加重され、合計25%(50万円超の部分は35%)も支払わなければならなくなります。
25%(50万円超部分は35%)というのは、本税が80万円の場合、加算税は23万円にもなり、
合計で100万円を大きく超えるのです。
期限後申告を繰り返すことだけは、絶対に避けないといけないということをお分かりいただけると思います。
※ 期限後申告等とは、①期限後申告書の提出(決定を予知してされたものに限ります。)、②税務署の決定の
処分をいいます。
⑵ まとめ **お勧めする対応方法
以上のように、修正申告を行う場合でも相当重い加算税等が課されますが、法定申告期限内に申告を行っておらず、期限後申告を行う場合や調査により決定を受ける場合の加算税は、過少申告加算税に比べて重い、厳しいものとなっています。
特に、期限後申告を繰り返した場合は、非常に厳しい加算税が課されます。
当初から申告期限までに適正な申告を行うというのが、精神的にも金銭的にも一番良いというのは
当然なのですが、実際には申告誤りや申告漏れは起きます。
また、申告自体していないということも実際には多数あります。 それは税務署も分かっています。
そのような場合でも、税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告等を行えば、加算税は軽減される場合があるのです。
繰り返しますが、申告に誤りや漏れがあること、申告納税すべき所得・税金があるのに申告していないことに気が付いたら、できるだけ早く、専門家に相談して、できれば税務署の調査を受ける前に修正申告等を行うことをお勧めいたします。
(注)1 追徴本税は、修正申告書を提出する日が納期限となりますので、その日に納めてください。
2 この場合、法定納期限の翌日から完納の日までの延滞税を併せて納付する必要があります。
詳細については国税庁ホームページを参照してください。
延滞税 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
延滞税の計算方法 https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm
以下は調査の専門家としての助言です! |
修正申告や期限後申告を行った納税者がそもそも実地調査の対象となっていた場合や修正申告等の内容では適正ではないと想定される場合など、税務署が実地調査が必要と判断すると実地調査が行われる場合があります。
このため、修正申告等を行う際の対応は、非常に重要となります。
誤っている部分だけでなく、申告内容全体をどう見直し、どのような書類を作成し、提出する際に、国税当局のどの部署の誰に、どのように説明し、どう提出するかによって、事後の実地調査等を防ぐことや納付税額を最小限に抑えることができます。
修正申告や期限後申告を行う際は、高度な専門知識が必要となる案件もありますので税務調査対策の専門家にご相談することをお勧めします!